第3話 猫、訪問者が来た理由を知る

 ユイカが振り返ると猫はすぐになにがあったのか尋ねる。

『ご主人、今来た奴はなんだ? 変なじじいとロボットみたいな女はなにをしに来たんだ?』

 ユイカには伝わっていないらしく、「大丈夫よ」と猫の頭を撫でてきた。返事をもらえない猫は不満げに鳴くもそれもユイカには伝わらない。ユイカは猫の頭を撫でた後、テレビの前へと戻っていった。

 取り残された猫のそばにユニアルが近付く。猫はユニアルに尋ねた。

『お前、今来た奴を知っているか?』

 ユニアルのランプが点灯する。

《ワタシヲ作ッタ会社ノ方ガ来マシタ》

『なんでだ?』

《ワタシヲ回収シニ来タヨウデス》

 猫は素っ頓狂な声をあげた。

『なんでだよ? お前、なにかしたのか?』

《イイエ、ワタシハナニモシテイマセン》

『じゃあ、なんでだ?』

 猫は首を捻った。ユニアルは自分の事だというのに興味なさそうに両手を動かしゴミを吸い込んでいる。猫はますます意味がわからなかった。

「ユニアル、聞いてた?」

 ユイカの耳に猫とユニアルの会話が聞こえたのか、心配そうな声でユニアルに尋ねる。ユイカの表情は不安そうだった。

《ナニヲデショウカ?》

「あのね、今、あなたを作った会社の人たちが来たの。あなたの事を回収するんだって」

 ユニアルはランプを点灯させた。

「あなたは、どう思う?」

 ユニアルはまたランプを点灯させる。答えは返ってこない。ユイカは一つため息を零すと立ち上がった。

「なんてね。わかる訳、ないよね」

 ユイカはキッチンへと向かい、コップを手に取ると蛇口を捻り、水を汲んで一気に飲みほした。

『おい、ご主人はなんて言ってた?』

《ワタシニ対シ、ワタシガ回収サレル事ヲドウ思ウカ聞カレマシタ》

『お前、なんて答えたんだ?』

 ユニアルはランプを点灯させたが返事はない。

『なんだ? なにも答えてないのか。自分の事だろうが。なにも考えてないのか?』

《ワタシハ掃除ヲシマス》

『掃除はわかったんだよ。回収されるって事は、この家を出て行く事になるだろう。お前はそれでいいのか?』

《ワタシハ掃除ヲスルダケデス》

 的を射ない答えだった。猫はイライラした様子で尻尾を床に叩きつける。

『なんだよ! お前はオレやご主人と離れ離れになってもいいのか?』

 ユニアルはランプを点灯させた。

《カワリマセン》

『わかりませんだぁ? なんだお前、もういい! 勝手にしろ』

 猫は鼻息荒く、駆け足でキャットタワーを駆け登った。ユニアルは少しだけ手を止め、無言になる。まるでなにかを考えているようだった。

 そうしてしばらく黙り込んだ後、ユニアルはまた掃除を始めた。


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