第2話 猫、訪問者の話を聞く
「へ?」
ユイカが間抜けな顔を見せる。反対に、白髪の男性はいたって真面目な顔をしていた。
ユイカが男性の言葉を繰り返す。
「ペットの言う事を聞く?」
「はい」
男性はそう答えてからポニーテールの女性に合図を送る。女性は袋から大きな箱を取り出してユイカに差し出した。それはユニアルの写真が印刷されている箱だった。
「という訳でして、回収して本来の製品をお渡しする為に今日はお邪魔させていただいたのです」
ユイカは箱を一瞥した後質問する。
「それの、なにが悪いんですか」
男性はまさかそんな質問が来るとは思わなかったのか、「へ」と漏らした。汗を拭き、しどろもどろ答える。
「ええ、まぁその……。それでお怪我をされたお客様がいらっしゃいまして、社内で危険ではないかという話になったんです。それで、回収という話になりまして」
「それって絶対ですか」
「え? それはどういう……」
「別に、私は困っていないんですけど」
「しかし、今後なにが起きるかわかりませんよ?」
「いや、でも、あの子がユニアルに命令して私になにかするとは考えられないんですよね」
「今はいいかもしれませんが、後になにかあっては当社としても……」
男性は強気には出られないらしく言葉を濁す。汗を拭く手を速め、隣にいる女性に応援を求める。しかし女性は先ほどから一言もしゃべろうとはしない。
「今、決めなくちゃ駄目ですか? 少し、考える時間が欲しいんですけど」
「考える、時間ですか……」
男性は女性を見る。やはり女性はまっすぐと前を見据えたまま答えない。男性はため息をついた。
「そうですねぇ、じゃあ、また明日来ます」
情けない声で返事をし、お辞儀した。女性は紙袋から出した箱を仕舞い、同じようにお辞儀する。
「わかりました。明日、またお願いします」
ユイカの返答を聞くと、男性は手刀を切って「では」と女性と二人、玄関を出て行った。
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