猫とロボット回収
第1話 猫、訪問者を警戒する
その日はいつもと違っていた。
なんだか騒がしい予感が猫の胸を締め付け、そわそわさせていた。猫はなぜ自分がそう感じているのか理解できていない。違和感を拭う為に、猫は自分の体を舐めまわす。
ピンポーン。
インターフォンが鳴る。部屋でテレビを見ていたユイカが首を傾げ玄関へと向かう。猫はそれをじっと目で追いかけた。
ユイカはドアスコープから外を覗き込んだ後、チェーンをかけた状態でゆっくりと戸を開く。その仕草は知らない人間が来た時のものだと猫は知っている。嫌な予感が現実のものになるのだと、警戒から毛がやや逆立つ。
「あっ、こんにちは。お忙しいところすみません。わたくしこういうものです」
隙間から声が聞こえた。猫はキャットタワーを飛び降り、訪問者の顔を見る為に場所を移動した。
そこには二人の人間がいた。一人は真っ黒なスーツを身に纏った白髪の五十代くらいの男性、もう一人は灰色のスーツに下はタイトスカートという姿で髪を一つに結んだ三十代くらいの女性が立っていた。
白髪の男性が白い紙をユイカに向かって差し出している。ユイカは訝しげにそれを受け取った。
「あれ? ユニアルを開発した会社の方、ですか」
「そうです。あの、すみません。ええと、現在ですね、ユニアルをお買い上げいただいた方のお家を訪問していまして……」
気弱そうな男性はハンカチで汗を拭いながら困った顔を見せる。
「ああ、ちょっと待ってください」
ユイカは一度戸を閉めてチェーンを外すと再度戸を開き、表に立つ二人を中に招き入れた。玄関口で三人は立ったまま話をする。猫はじっとそれを見つめる。
「実はですね。今お持ちのユニアルに不備が見つかりまして、回収して回っているんです」
「不備ってなんですか」
「ええ、まぁその……。本来であれば人間の言う事を聞くようにできているのですが、ロットの末尾が四番のものは、プログラムに異常が発見されまして、その……」
口ごもる白髪の男性にユイカは息を飲む。もしかして……の想像が頭を過る。
「実は、ペットの言う事も聞いてしまうんです」
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