第11話 猫、カラスを追い出した褒美がほしい
ユニアルが体の向きを変えてユイカの前に停まる。ユニアルは猫語を翻訳し、ユイカへと伝えた。
《彼ガオコナッタト言ッテイマス》
「え?」
《彼ガオコナッタト言ッテイマス。褒メテクダサイ》
ユイカはぽかんと口を開けている。ユイカのその姿を見て猫は、あまりにもオレが勇敢すぎて驚いているのだろうと胸を張る。
「……って言ったでしょ」
小さな声で囁かれた。猫は首を傾げる。
「駄目って言ったでしょ! しかもこんなにご飯食べちゃって! 体にも良くないんだから! それにね、この一袋が一体いくらすると思っているの?」
猫の体が持ち上げられる。ユイカと目線が会う。どうも様子がおかしい。
ユイカは怒った顔をしていた。猫はなぜユイカが怒っているのか理解できずに困惑する。ユニアルとユイカを交互に見やった。
『どういう事だ。なぜ褒められない? 俺はカラスを追い出したんだぞ? お前、ご主人になんて伝えたんだ?』
《アナタガヤッタト伝エマシタ》
『それだけ?』
《ハイ》
猫の顔からは血の気が引いていた。口をパクパクさせ、空気を飲み込む。
『そんなんじゃ伝わる訳ねーじゃねぇか! 俺はカラスを追い出した事を伝えてほしかったんだよ!』
ユニアルは少ししてランプを交互に点滅させた。
《承知シマシタ》
猫語を翻訳し、ユイカへと伝える。
《彼ハカラスを追イ出シマシタ》
「なに言ってるの? そんなウソには引っ掛からないからね! どこにもカラスがいた形跡なんてないでしょ。しばらくご飯の量を減らしますからね」
ユイカは猫を床に下ろすと、腰に手を当て膨れっ面のまま部屋へと入っていった。
「キャー!」
再びユイカの叫び声が聞こえた。猫は壁から部屋の中を覗き見た。
床に散らばるCDとCDケースの残骸に、ユイカが肩を震わせている。猫は嫌な予感が頭をよぎり、早々にキャットタワーへと非難する。思った通り、ユイカはひどく怒りを露わにし、地団駄を踏んでいた。
「もう! なんで家に中をめちゃくちゃにするのよ! しかもこれ、気に入ってたCDなのに!」
猫はなぜ怒られるのか納得できず、ふて腐れた顔で耳を閉じるように前足で押さえながら眠りについた。
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