第10話 猫、カラスを追い出した報告をする。

 猫が目を開けたのは、真っ暗な部屋の中に玄関の戸を開ける音が聞こえた頃だった。

『おっ、ご主人だ』

 キャットタワーを飛び降り、ご機嫌に玄関へと出迎えに向かった。

 玄関の戸が開き、隙間からユイカの顔が覗いた。疲れた顔をしている。肩を落とし、ため息を吐いていた。

「ただいま。お出迎えありがとう」

 玄関に座っている猫が目に入ると、顔を緩めて頭を撫でた。優しく撫でるその手に、猫は自分の頭を押し付ける。

「よーし。ご飯にしようか」

 よろめきながら立ち上がり、ユイカがキッチンの電気を点けた。明るくなった部屋の中に映し出された光景は、ユイカが叫び声をあげるのにじゅうぶんな惨状だった。

「キャー!」

 ユイカは腹の底から声をあげた。床には猫の餌が入った袋が、ほとんど空の状態で転がっている。ユイカは猫のほうを振り返り、わなわなと震えながら尋ねた。

「あんた、またご飯食べちゃったの? しかも袋開けたばっかりなのにもうない! そんな食べたら病気になっちゃうでしょ。もう、なんでこんな事するのよ! 駄目って言ったのに」

 ユイカは全身から力が抜けたのか床にへたり込む。

 猫はユイカが何を言っているのかわからず、ユイカの太ももに前足を乗せて今日あった出来事を叫ぶ。

『ご主人、聞いてくれよ! 今日はカラスを退治したんだぜ。このオレがやったんだぜ? なぁ褒めてくれよ!』

 猫は褒めてもらおうと嬉しそうに鳴く。一向に褒めてくれないユイカに、猫は前足をさらに踏み出し、頭をユイカの頬に擦り付けた。

 そこへユニアルが登場する。ユイカのそばで両手を回転させてゴミを吸い込んでいた。

『なぁお前、ご主人に伝えてくれよ! オレがやったって! 褒めてもらうんだ!』

 猫が言うと、ユニアルはランプを交互に点滅させた。

《承知シマシタ》

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