第9話 猫、カラスを追い払う
『おっと』
足を止め、部屋の中からキッチンを覗く。そこには先ほどと変わらず餌をついばむカラスとその周りを回るユニアルの姿があった。
『おい、おい!』
猫が小声でユニアルを呼ぶ。ユニアルは猫の声に気が付き、機体を反転させて猫へと近寄った。
《ドウシマシタカ?》
『ほら、これを頭に乗せろ。アイツはこのシーデーって奴が嫌いなんだ。これを見せて一気に外へ追い出すぞ』
ユニアルはランプを交互に点滅させる。
《承知シマシタ》
『よし! お前はカラスを下から追い回せ! オレは……上から奴を追い回す』
頭のヘコミ部分にCDを差し込まれたユニアルは機体を反転させ、カラスの元へと戻っていく。頭に刺さったCDは光に当たって反射していた。
CDに反射された光がカラスの目を照らす。餌に夢中になっていたカラスだったが、その光に気付くと目を細めた。
ユニアルがカラスに突進していく。カラスはその速さに驚き羽を広げユニアルを威嚇する。機械に威嚇は通用しない。眼前まで近付いてきたユニアルに、カラスは慌てて上空へと逃げた。
『おお。やっぱり効くな。よしよし、これなら怖くないぞ』
猫はヒゲをピンと張り、ニヤリと笑った。
空を飛ぶカラスの下をユニアルはずっと周り続ける。
《ゴミガ落チテイマス》
警告音を発し周り続けるユニアルに、カラスは不快だと声を荒げで反応して見せる。それでもユニアルは警告を発しし続ける。カラスはいい加減うんざりと言いたげにキッチンを出て部屋へと移った。
今だ、と猫はCDを口に咥えたままカラスの前に飛び出す。カラスは猫に驚きバランスを崩す。壁に激突して床に落ちた。
『へ! ざまぁねぇな! 勝手に俺の家に入ったからこうなったんだ』
猫が笑う。カラスは慌てて体を起こして猫を睨む。猫に突進してこようとしたが、ユニアルが近付いてきたのに気付くとカラスは奇声のような声を上げて飛び立つ。
カラスは壁になんども身体をぶつけて飛び回る。その先にはCDを持つユニアルと猫がいて、カラスはひいひい言いながら逃げ回る。
少し開いた窓の隙間を見つけると、カラスは一目散に通り抜けていった。
猫は急いで窓を閉める。カラスのほうを見ると、振り返る事もなくそのまま空の彼方に消えて行った。
『追い出せたぞ! やったぜ!』
猫は尻尾をまっすぐに伸ばし喉を鳴らした。
《ゴミガ落チテイマス》
大はしゃぎする猫とは裏腹に、ユニアルは自分の仕事をまっとうするべくすでに意識は掃除に向いていた。
『なんだよ。つまらない奴だな。せっかくカラスを追い出せたんだ。もっと喜べばいいのによ。本当に掃除が好きな奴だ』
部屋に敵がいなくなった事で猫は安心したのかあくびをした。キャットタワーへと駆け上り、定位置で眠りについた。
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