第8話 猫、カラスに倍返し
猫は部屋へと走り出した。それと同時にユニアルはカラスの方へと戻る。カラスはユニアルがそばにくると威嚇めいた声を発した。
部屋に戻った猫は戸棚に手を引っかける。物は戸棚に仕舞うという発想が猫にはあるらしく確信めいた顔をしていた。
『ここらへんにあるはずだ』
三つの戸棚の端から順に開けていく。一つ目は本がびっしり並べられていた。二つ目にはユイカが顔に塗りたくっている薬品がいくつも並べられている。中々見当たらない事に猫は軽く舌を打つ。
最後の棚を開けるとようやく目当てのものを見つけた。猫はしめたと笑みを浮かべる。手を奥へと差し入れ、爪でそれを取り出そうと奮闘する。
『もう少しだ』
つま先で立ちながら手をさらに奥へと入れる。爪がそれに引っ掛かり、ようやく一枚だけ取り出す事に成功した。
『この入れ物の中にシーデーがあるんだ。でも、どうやったら取れるんだ?』
猫はケースの中に仕舞ってある丸いCDを取り出そうと前足を使ってケースを引っ掻く。透明なケースは猫のひっかき傷だらけになっていた。
きっちりと仕舞われているせいで、なかなか取り出す事ができない。猫は腹を立て、前足を勢いよくケースに叩きつけた。さらに全体重を前足に乗せる。パキン――と割れる音が響いた。
『やったぜ! さすがオレだ』
透明なケースにヒビが入り、上蓋が外れていた。その要領でもう一枚のケースを棚から取り出し、中からCDを取り出す。きらりと光る二枚のCDを口に咥え、猫はユニアルの元へと走った。
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