第7話 猫、カラスを追い出す秘策を思いつく

 猫が目に涙を浮かべているのに対し、ユニアルはカラスのそばで床に散らばった餌を吸い込んでいた。カラスが不機嫌そうにユニアルに向かって鳴くが、ユニアルは気にもしない。

『なんだアイツ。怖くないのか?』

 猫のヒゲは弱弱しく垂れ下がる。自分ではどうにもできないと猫は理解した。一匹と一体のやり取りを陰で見守る事にしかできなかった。

 床が綺麗になった頃、ユニアルはようやくその場を離れた。

『おい! こっちだ! こっち来い』

 猫が小声でユニアルを呼ぶ。ユニアルはランプを交互に点滅させ、猫へと近付いた。

《ドウシマシタカ?》

『どうしましたじゃねぇんだよ! お前、アイツが怖くねぇのか?』

《ワタシハ掃除スルノガ仕事デス》

 要領の得ない返答に猫は顔を歪めた。

『はぁ。まあいい。それより餌で釣って外においやる作戦だが、餌を取られてしまった。作戦を変更せねばなるまい。他の作戦はないのか?』

 ユニアルは音を鳴らすばかりで答えない。猫は首を振った。

『なんだ、次の作戦も出てこないのか。駄目だな』

 靴箱の影からカラスの行動を見つめる。相変わらず餌をついばんでいる。猫は悔しそうに喉を鳴らした。

『ああ、そうだ! アイツらはシーデーというのが苦手らしい。野良が言っていた。シーデーという奴をアイツに見せて部屋の外に追い込んでやろう』

《シーデートハナンデスカ?》

『歌って奴が入っているらしい。光る丸い奴だ。たしかご主人も持っていた。オレがそのシーデーを探すから、お前はカラスがオレの方に来ないように見張ってろ』

 ユニアルはランプを交互に点滅させた。

《承知シマシタ》

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