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エルフの少女が不良少女らに暴行を受けているのを目にしたねこりは――。
「何してるの! 自分より弱い者をしかも複数人でいたぶって楽しんでるなんて……許さない」
メラメラと心の奥底が熱くなるのを感じる。
「あ? 君に関係あるのか? ひょっとして、こいつの仲間か?」
「それはないんじゃない? こいつはエルフだけど、君は獣人だし」
「獣人じゃありません! 葉桜ねこりです!」
しーん…………。
え、またスベった!?
見ず知らずの他人に軽々しく名乗るのは危険ということをねこりは覚えたほうがいいのかもしれない。でも、これが彼女の
「……そうか、そうか。ねこなんとかは今すぐこの場から去れ。君には何も関係無い」
イラッ。
名前を間違えられた事に腹が立った。
「ねこりですっ!」
そう叫びつつ、不良少女をビンタした。手を出さないと決めていたのに、手が出てしまった。
「いった……」
「ご、ごめんなさい……」
「謝るんだったら、最初からビンタすんなよ」
「で、でもっ――この子にもそういう痛みを与えていたことに気づきませんか?」
「こいつとは
「戯れてるだけではエルフさんはこんなに汚れたりしませんし、涙を浮かべたりもしません!」
「……!」
不良少女らは目を見開き、だけどこちらを敵対する
「じゃあさ、聞いてくれよ。こいつが初心者で弱い癖に人の手柄を横取りしたんだぜ? 許せるわけねーだろ」
「そうそう。うちらのお金を勝手に奪ったの! だから、乱暴した」
「そんなこと――! (してません)」
最後のほうは不良少女に
どうやら、魔力の強さを
――酷い話だ。
「どういう魔法が使えるの?」
こっそりエルフの少女に耳打ちする。
「自然が操れる」
「だったら――」
――突如、強風が不良少女らへと吹き始めた。それは台風の時の暴風くらいの強さでギリギリ耐えられるくらいの強さ。でも、ずっと吹き続けられたら、飛ばされてしまう。
…………。
「止まった」
ボソッと不良少女が呟いた。
「力、尽きました……」
え、えぇーっ!
予想外の展開。せっかく、不良少女らをギャフンと言わせられるのかと思ったのに……。
「じゃあさ――」
「分かりました」
突如、大粒の雨が空から降り始める。
いや、こっちの魔法こそ、魔力消費し過ぎで疲れない?
て、お気にのワンピがぁああー!!
さっき買った、新品のワンピースが雨でびしょびしょに濡れてしまっている。
「やば、雨じゃん」
「行こ」
流石に雨の中、暴行する気は無いらしい。
でも、また狙われたら困るな……。
「もうこの子には近づかないで下さい! 分かったでしょう、この子の魔力の強さが」
「何のこと?」
え――気づいてないの?
どうも、不良少女らはこの風も雨も自然の物でエルフ少女の魔力とは何ら関係無い、と思っているらしい。こんなに凄いのに……。
不良少女らの姿が完全に見えなくなった後、エルフ少女の金品を確認する。全部は
でもこの子の心が傷ついているのは確かだ。だから、慰める。
「大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます」
エルフ少女を抱きしめ、頭を撫でてあげる。
馬車に乗ったら、もう安全。
「もう1スポットで着くの」
――雨は当然、止んでいる。
「今夜だけ、ねこなんとかさんのお
なんか、ロマンチックなセリフがねこなんとかさんって言葉で全て水の泡になってる気がするのですが!!
「ダメ、ですか?」
上目遣いは可愛いんだけども。だけども。
「葉桜ねこり!」
「ねこなんとかさんじゃダメなんですか?」
「ダメ」
「タメ口は?」
「いいよ」
「ねこなんとかさんって不思議な人だね……」
どこが?
「私、ねこなんとかさんのこと、好きだよ。惚れた」
惚れた!?
「私もエルフちゃんのこと、好き」
「エルフちゃんじゃなくて、本当の名前、あるんだけどなー」
「私もねこなんとかさんじゃなくて、本当の名前あるんだけど」
「「ふふっ」」
馬車内は賑やかな笑いに包まれた。
エルフ少女の名はフーラというらしい。
ねこりはフーラのことを救って良かった、と心から思った。
だって、こんなにかわいいんだもん。
好きって言ってくれるし。女の子に好きと言われるのも、案外嫌じゃないね。
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異世界で色んな種族の女の子達がわちゃわちゃとカフェを開くそうです。 友宮 雲架 @sss_469m
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