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胸元の大きなリボンが特徴の赤いワンピース……シンデレラが着ていたような、透明感が美しい水色のドレス……レースが可愛い白いブラウス…………うーん、悩むね。
持ち物の量と金の問題で買えるのは上限2着までだと思ってる。ブラウスとスカートは上下セットだとして、2セットまで。下着類はサイズが合ったモノを適当に買い物カゴに放り込んだ。勿論、所持金の負担にならない程度に。
あれ……? ちょっと待って。
(ズボンが一着も売ってない……)
男がいないから、当たり前か。いや、女の子でもズボン履くよね? 可愛くないから、ダメなのか……。
――て、値段高っ!
値段をさっきから気にしてなかったねこりはびっくり。はちみつの約100倍の値段です。
ねこりがじーっと値段のタグを凝視していると。
「――試着、してみますか?」
店員さんに声を掛けられた。
「は、はい……」
「猫獣人さま用の衣服はこちらになります」
そもそも、衣服コーナー自体、間違っていたらしい。
て、猫獣人って可愛くない!!
もしかすると、もしかしなくても猫獣人というワードはねこりの地雷なのかもしれない。
「猫耳美少女とお呼び下さい! お願いします」
ペコリ、と頭を下げる。本当に猫獣人という言い方は
「失恋致しました。猫耳猫しっぽ美少女さま」
「猫しっぽ要らない!」
「猫しっぽ、生えてるじゃないですか。とても可愛らしいですよ?」
「そういうことじゃ……(ないんだよね)」
ねこりは小さく呟く。
――衣服コーナーを移動し、試着を終えたねこり。
「可愛い、ですか?」
「めっちゃ可愛いですっ! 抱きしめたくなるほどに」
同性でも抱きしめたくなるくらいなのか……。じゃあ、異性だともっと、もっと――。
「抱きしめても、いいですか?」
店員さんの瞳が
「ダメに決まってるじゃないですか! 店員と客ですよ」
「そうでした」
お金を払って、店から立ち去ろうとした刹那――
「お買い上げ、ありがとうございます。きっとデートの際、100%彼女さんにかわいいと言われると思います、そのコーデなら」
「わたし、彼女も彼氏もいないんですが……」
「え――」
店員さんはひどく驚いていた。
次に「じゃあ、私があなたの彼女になってあげる」とか言い出すのだろう。そう察知したねこりは素早く店から退散した。
ねこりが買った衣服は今着ている、メイド服っぽい白と薄ピンクを基調としたワンピース。それから、黒いブラウスに黒のミニスカートというゴシック風な服。ねこりにしては大人っぽい。靴下も十字架の模様のある、黒の靴下を買ってしまい、ちょっぴり
白い地味なノースリーブのワンピースは脱いで、袋に
――馬車に再度揺れる。もう時刻は夕方。
馬車から見える人々も少なくなってきている。夕焼けが綺麗で眩しい。
そっか……ここに来てから、一日が経つのか……。なんか、日本に戻りたくない。
久しぶりに吸った、澄んだ空気はとても美味しかった。それに――これは根拠のない直感だけど、ここでなら引きこもらない気がする。
ここの人たちはみんな良い人ばかりだったし、それにねこりは自然を求めていたんだと思う。日本の都会の薄汚れた空気じゃなくて、異世界の自然豊かな美味しい空気を吸いたい。
そんな物思いに
次停まるスポットはねこりが住み始めたログハウスの1個手前。
だけどっ――
「降ります」
――助けなきゃ!
反射的に身体は動いていた。
急いで馬車から降り、そこに向かう。
そこで何が行われていたのかというと――。
「助けて下さい!」
少女は叫ぶ。
でも、叫んでも叫んでも、不良少女らに蹴られるのは変わらない。少女は土に
こういうの見るのは胸が痛いな。日本でもそういやあった。ここの人たちはみんな良い人で優しいのかと思ってたけど、それは勘違いだったようだ。なんだか悲しい。
「離して!」
少女は腕を両側から強く引っ張られる。
目に涙を浮かべているその姿は何とも痛々しい。
そう、そこではエルフの少女が不良少女らから暴行を受けていたのだ。
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