第13話小学一年生の二学期が終わる
「捕手以外のポジションに興味はないのか?」
本日も平日特訓の休憩中にお兄さんは雑談程度に徐ろに口を開いた。
俺はその質問に軽く首を傾げながら返答していた。
「投手には深い興味があります。
一般的にバッテリーとして相方の様な存在と言えますし。
投手のことをもっと深く知りたいと思います。
そういった点では…興味があると言えますね」
少しばかり歯切れの悪い返答を耳にして。
お兄さんは思わず苦笑のような表情を浮かべていた。
自分で用意したお茶に口をつけて。
口内を少しばかり湿らせたお兄さんは一つ咳払いをしていた。
「投手を努めたいとは思わないのか?そういった興味はどうだ?」
お兄さんが何を言いたいのか。
本質的な部分で俺は理解できていない。
この問答に一体どの様な意味が込められているのか。
どの様な真意があるのか。
そんなことを考えていた。
「いやいや。本当にただの雑談だから。
少年時代についていたポジションをずっと続けるパターンの選手もいるが。
中学、高校で…
または更に先のステージで急にポジションを変更することもあるだろう。
それはチームの状況で仕方なかったり。
剣には捕手よりも適正の高いポジションがある場合も。
今の段階から一つのポジションに固執する必要もないだろ?
様々な可能性を模索していき。
その中でやっぱり捕手がやりたいと思ってからでも遅くはない。
何事にも遅いなんてことはないさ。
剣が少年野球の指導者に言われて仕方なく捕手をやっているのであれば…」
お兄さんの杞憂に俺は柔和な笑みを浮かべて首を左右に振っていた。
それを目にしたお兄さんは少しばかり呆れたような表情を浮かべて笑う。
そのまま少しの嘆息をして。
「意固地なやつだ。なんでそんなに捕手が良いんだ?」
続く質問に俺は自分の中に存在する捕手に固執する思いを口にしていた。
「全てのポジションを経験したわけではないのですが。
だから偏見も多く含まれていると思います。
それを考慮して聞いて下さい。
やっぱり守備の要と言うか。
一人だけ味方と反対方向を観て守っているのが特別感あるというか。
相手打者と同じ目線に立っていて。
一番近くで打者を観察できて。
好打者や強打者を手玉に取ったり翻弄したり出し抜いたり。
そういった頭脳プレイで。
投手の能力だけでなく。
俺が捕手だったから打者を抑えられたと。
そんな評価をしてもらえる捕手になりたいんです。
だから…捕手に憧れがあるんです」
俺の返答を耳にしたお兄さんは。
少しばかり思案気な表情を浮かべた後に口を開いた。
「なんか…知っているかわからないが…
全盛期のケインみたいな捕手になりたいってことか」
俺の想像していた憧れの捕手の名前をドンピシャで当てられて。
俺は驚きの表情を浮かべて口をあんぐりと開けていたことだろう。
「そんなに驚くこと無いだろ。捕手と言えばケインを思い浮かべるのは当然だ。
むしろケインを目指していて安心した。
ケインが捕手として素晴らしい選手であると言うことを理解していて良かったよ。
あの頃の選手は伝説級だったからな。
投手の…」
お兄さんはそこでしまったというような表情を一瞬だけ浮かべて。
しかしながら俺が笑みを浮かべていたため頭を振って話の続きを口にしていた。
「兎にも角にも最高峰の捕手を理解していてくれて良かったよ。
そろそろ練習再開するか。
この後は捕球投球練習にしよう」
お兄さんの気を使った発言に苦笑して。
俺達は縁側から立ち上がると。
日が暮れる頃まで捕球投球練習に励むのであった。
小学一年生の二学期は次第に過ぎていって…
俺は冬休みを迎える12月を過ごしていた。
平日はお兄さんと特訓。
休日はレギュラーチームで練習。
そんな生活を過ごしていき。
小学一年生の二学期が終了。
そして冬休みに入り…
今回は中途半端な所で終わりますが…悪しからず。
次回へ…!
とある捕手の再始動 ALC @AliceCarp
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