中古れあちーずけーき
お前はチーズケーキを食べたことがあるか?
あぁっ、真っ先に頭に思い浮かべたあれだ。誰しも一度は食べたことのある庶民一般的なものだ。
その中でもひときわ私が注目してるのがレアチーズケーキだ。
あの繊細な味わいがもたらすレアチーズのおいしさを、じっ──くりと堪能したあの日から──チーズを視線に入れる度、それが脳裏によぎって仕方がないっ。
人気かつ定番のスイーツといえばチーズケーキ、甘いもの好きに小さな幸せをもたらすといえばチーズケーキ、ベイクドやバスクなど種類も様々で、どれを選ぶかという楽しみがあるといえばチーズケーキっ。
私の生活に支障をきたすほど侵食してきた侵略者は彼女が初めてだ。
彼女は色んな香りがする。
一番下はバタークッキー、中間層にこれでもかと凝縮したレアチーズ100%のムース、トッピングには──清潔感あるホイップクリームときた。
白く輝く眩しい⋯⋯「レアチーズ」
はあっ、純白でなめらかな上に、ちょこんと乗った可愛らしいホイップクリームが彼女の存在をさらに引き立てる。
承諾を得た上でさっそくいただいてみたが、上腹部から中腹部にかけて、溢れ出た果汁のサッパリ風味が口の中いっぱいに広がった。
このような経験は今までになかったことだ。
主張が強すぎることは無論なく、こうばしくも爽やかな後味が尾を引く。私好みのものをよくリサーチ出来たと心から賛辞を送りたいくらいだ。
口元にそれをもっていくと、舌触りもなめらかで、溶けて消えていくようななめらかさがたまらず、我を忘れてされど優しく彼女を貪った。
なめらかな口当たりと、チーズケーキのような食感を楽しめる彼女はほどよい付き合いで食べやすいということもあり、「スキマ時間にピッタリだから、チーズケーキが大好きなやつは、ぜーったい食べてみた方がいいぞっ!」、「メス果汁が効いてるのに、甘さもしっかり感じられて美味でござった」、「ふわふわでなめらかな肌のつや感がクセになる」等、ネット上で絶賛の声が相次いだ彼女を我が物に出来たことが心の底から嬉しい⋯⋯が、すでに純潔は失われていた。
時すでに遅しってやつだ。
今更過去を嘆いたところで何も変わりゃしないからな。
正直に言うと最初に──誰よりも先に、味見をしたかったというのが本音だが──。
まあともあれ彼女は私を受け入れ、私は彼女を受け入れた。
言うまでもなく彼女との相性はバッチリ。
はぁ、スプーンを奥まで深く差しこんで、掻き乱して、苦さと甘さの均衡がよく混ざりどう変わるかで広がる食べ合わせの通りが──これから先、互いに交わりあう未来で新たに生まれるであろう“コク”と“食感の変化”に彼女が、私が、包み包まれるその瞬間がこれから愉しみだ。
百合短編集【更新型】 小鳥遊 マロ @mophuline
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