百合短編集【更新型】
小鳥遊 マロ
第1話 振り向き際にキスをする
「──みーかっ」
椅子に座りヘアアイロンで髪を流していると私に声をかける人物がいた。
「んぐっ」
振り向くと同時に生温かい感触が口元へ伝わる。──私はキスされたのだ。
「んっ⋯⋯みか♡」
「ちょ、ちょっとまっ⋯⋯。はげしっ⋯⋯んっ」
軽いキスも束の間。強引に舌を入れ、私の舌に纏わりつくように貪ってくる。抵抗することもできず全てを受け入れてしまう。
しおりは舌を絡ませながら、体勢を変え、私の股に膝をグイグイと擦るようにして押し付けてきた。
着ているバスローブ越しにしおりの体温を私は感じた。
「あっ♡ ⋯⋯ダメっ♡」
あそこがキュンキュンとさびしく切なく熱を帯びてくる。
完全にペースを呑まれ、思考する力をうばっていく。
「気持ちい⋯⋯」
私がそう言うと彼女は最後に軽くチュッと口付けして離れた。
「名残惜しいけど、今日は仕事だからゴメンね。帰ってきたら沢山ご褒美あげるから──」
まるで飼い主にしつけられた犬のように扱われる私。
まあ実際あんなことやこんなことを調教されてるから否定出来ないけど⋯⋯。
せっせと身支度する様子を眺めていると、あっという間に彼女は準備を済ませてしまった。
「それじゃあ、戸締まりよろしくね〜」
しおりが外に出ようとドアに手を掛けた時、私は呼び止めた。
「しおりっ」
すると彼女は案の定こちらに振り向いた。
「なに──むぐっ」
「はむっ」
今度は私が彼女の振り向き際にキスをした。
私がすかさず彼女に食らわした不意打ちディープキスは数十秒間息継ぎもせずに唇を重ね続けることになった。
「「ぷはっ」」
しおりと私の絡め合わせた唾液がお互いに糸を引き、光る。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯しかえし」
「はぁっ⋯⋯はぁっ⋯⋯覚えてなさいよ〜」
──チュッ
そして最後にお互いキスをした。
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