第7話「結び」
天球に浮かぶ三日月、煌めく星々。夜半の王宮のバルコニーから、深海の如く青い夜空と、静かに波打つ海を見つめていた。ユハルが実の兄ではなかったという事実は、いまだ心の奥底で、さざ波のように広がり続けている。
何故、王家に貰われたのだろう。いつから養子である事を知ったのだろう。
「アリシャ!だめだぞ。心の声が漏れてる」
ルシアである。今一番会いたい人だった。怖くて顔を見せられなかったのだ。
「もう大丈夫?悪い所はない?気分はどう?」
「矢継ぎ早に過保護だな。アリシャは。大丈夫。心配なのは君」
「ごめん。ユハルはルシアのお兄さんなの?」
「家系図が嘘じゃないなら。私が知ったのはつい最近だよ。兄貴も多分そう」
寄せては返す波音が侘しい。縋りつく様にルシアに訊いた。
「ユハルは何で王家に貰われたの?知っている事を全部教えて!」
「ごめん。それは分からない。ただ私達は白の一族の生き残りなんだ。生まれつき高い魔力を持っている。それが関係してると思う」
白の一族?雪国の奥地で暮らしていた。私が知っているのはそれだけだ。
「あのねぇ、アリシャ?実兄にプロポーズした恥ずかしい過去を何とかしてくれんかね。知らなかったとは言えね?」
「それは自業自得という奴です」
私は、にやりと悪戯っぽい笑みを浮かべた。ふふ。一生頭が上がるまい。
「いやなやつー。でも愛嬌のあるのがアリシャだよね」
満天の星を見上げながら、ルシアはため息をついた。
「アララタの神様に乗って会いに来ただろ?私も」
彼女は、私の専属の付き人となった。友人としても、心の底から語り合える。今は、これ以上の喜びはない。(第1章終わり)
ユハルストーリー~イスファの国の物語~ きゃっとらばー@ユハルストーリー🧙♂️ @daisatukai
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