タメ語使ってすみませんでした

俺はアシュリーを抱え、乗馬に悪戦苦闘しながら夜通し移動しつづけた。眠気と戦いながら馬を歩かせていると、目の前に照らされた山の麓が見えてきた…夜が明けたのだ。


神々の山と呼ばれるのにふさわしく、山は輝くエメラルドグリーンで空気は澄んでいる。

やっと着いた…馬から下りて気が緩んだ瞬間俺は気絶した。


俺が目を覚ますとすでにお昼をまわっていた。俺の顔を心配そうに覗きこむアシュリーと目が合う。

「アシュリー心配させてごめん。」

「イチロー、話はあとだ。まずはリュックの中の飯をくえ。前の世界のなら食べられるだろう」

俺がカロリーメイトと水筒の水を飲んでいるのを見ると、アシュリーは話し始めた。


「思いのほか山には早くついたな。さっきイチローが寝ている間に手紙を書いた。この手紙を日本のある女性に届けてほしいんだ。届けてほしい女性がまだ生きているか分からない…難しい話だと思うができればひきうけてほしい」

「アシュリーが頼みたかったことってもしかしてこのことなのか??アシュリーには何回も助けてもらったしこの手紙届けるよ。その人について教えてくれないか」

「あぁ!ありがとう、この女性は俺の初恋の人なんだ。彼女とは仲がよくてよく一緒に山に登ったんだ。彼女はまるで山に咲く一本の百合のようで…来年も再来年も一緒に山に登れると信じて告白を先延ばしにしてしまった…。そうこうして結局俺は山で事故にあい死んでしまったという話だ。」


「ちょっと待って、アシュリーは転生したってこと?」

「転生…?よく分からないが、たぶん向こうの世界で死んで、こっちの世界に生まれ変わったんだと思う。記憶が戻ったのは広場でだな。」

「もっと早く教えてくれればよかったのに!」

「ハハハ!!!イチローは声が大きいからな、今みたいに大きな声を市街地でだしたらすぐ異世界人狩りが来るぞ」

「そうか、アシュリー…いやアシュリーさん助けてくださりありがとうございます」おそらく年上だろうと思われる人にタメ語を使うのははばかれる。

「いや普通に話してくれ、それと俺のことはたもつと呼んでくれ日本での名前だ」

アシュリーことたもつは日本人としての性格が戻ってきたのか気づいたら僕から俺に呼び方が変わっていた。


「俺はこっちに生まれかわってしまったから一緒には帰れない…でも俺の分まで向こうで生きてくれ。最後まで見送らせてほしい」


「わかった。この手紙は絶対に届ける。」

それから俺と保は日本でのお互いの生活について語り合った。するとそこには意外な共通点を見つけられた。なんと大学とサークルが一緒だったのだ。しかも年は1つ違いこれには運命を感じざるをえない。

俺達は夜が深くなるまで話に花を咲かせた。
















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登山の前にコンビニ寄ったら異世界大草原でした おくら豆腐 @okura-tofu

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