第7話 神霊

 神霊とのやり取りが終わった後、リックが部屋にやってきた。彼は俺が配信中に手に入れた巻物や光の剣のことを気にしている様子だった。


「お前、隠してることがあるよな?あの剣やスキルの正体……普通じゃ説明がつかない。」


 俺は正直に、自分が「異世界ライブ」という特殊な力を持っていることを告げた。だが、それが神々に関係していることまでは伏せておいた。


「配信ってやつで、戦いの様子を誰かに見せると、支援や報酬がもらえるんだ。それが俺の力の一部だよ。」


 リックはしばらく黙っていたが、やがて大きく頷いた。

「正直、理解できない部分もあるが……お前の力が本物だってのは間違いない。次の冒険でも頼りにしてる。」


 彼の信頼の言葉に、俺は少しだけ安心した。


 翌朝、ギルドに向かうと、新たな依頼が目に留まった。それは「大迷宮ラグナス」の調査依頼だった。


[依頼内容]

「最近、大迷宮ラグナスに異常な魔力の波動が確認されています。調査と必要であれば封印を依頼します。報酬:金貨50枚」

 リックが依頼内容を読み上げると、俺たちは顔を見合わせた。

「大迷宮ラグナスって、ベルディア領最大のダンジョンだぞ。本気で行くのか?」


「神々が俺を選んだ理由があるとしたら、そこに答えがあるかもしれない。」


 リックは苦笑いしながら肩をすくめた。

「お前がそう言うなら付き合うさ。俺の命を取らない程度にな。」


 こうして俺たちは次なる目的地――大迷宮ラグナスへの旅を始めることになった。この旅が、神々のゲームの全貌を知る鍵になるかもしれない。ベルド村を後にした俺たちは、北へ向かう街道を歩き続けていた。大迷宮ラグナスは、この地方最大のダンジョンとして知られており、その規模と危険度は他のダンジョンを大きく凌駕しているという。


 リックは地図を広げながら話しかけてきた。

「ラグナスに行く前に、近くの街で装備を整えるのが先決だな。お前、武器は例の光の剣だけか?」


「そうだ。もっと扱いやすい装備も必要だと思う。」


 実際、あの光の剣は視聴者から贈られた特別な武器だが、常時使えるものではない。過剰に頼れば、いずれその代償が訪れる気がしていた。


 途中で立ち寄った交易の街「ヴァルニア」。ここは商人たちが行き交う活気あふれる街で、武器や防具の店も充実していた。俺たちはまず、装備を揃えるために武具店に向かった。


「この剣なんかどうだ?頑丈で扱いやすいぞ。」

 店主が見せてきたのはシンプルな鉄の剣だった。派手さはないが、初心者には十分な性能だろう。


 名前:鋼鉄の剣

 品質:中級

 特徴:耐久性が高く、扱いやすい。


「これで十分だ。」

 俺は購入を決めた。さらにリックの助言で軽装の鎧とポーションをいくつか買い足す。装備を整えたことで、不思議と自信が湧いてくる。


 街での買い物を終えると、広場に小さな掲示板が目に入った。そこには「ラグナスへの旅路の注意点」と書かれた案内が張られている。そこにはこう記されていた。


[旅路の注意]

  1. ラグナス周辺は魔物の巣窟。複数人での行動を推奨。

  2. 魔物のランクはBからAクラスが多発。十分な準備が必要。

  3. ラグナス内には特殊な魔力障壁が存在。対策アイテムを用意せよ。


 リックが案内を読みながらつぶやく。

「障壁対策アイテムって、なんだろうな。魔術師が作る特殊な護符か何かか?」


「調べる価値がありそうだな。次の街で聞いてみよう。」


 その夜、宿で休んでいると、またしても配信機能が起動した。画面には「異世界ライブ開始」と表示され、コメントが流れ始める。



  • 「お、あの新人が次はラグナスか!」

  • 「準備は十分か?あそこは普通の冒険者じゃ死ぬぞ。」

  • 「障壁対策なら『魔力中和石』を持ってけ!」

  • 「初心者の大迷宮挑戦は見ものだな!」


「魔力中和石……」

 コメントの情報は侮れない。これまでも視聴者たちのアドバイスが危機を救ったことがある。早速、翌日そのアイテムを探すことにした。


 3. 魔力中和石の入手


 ヴァルニアを出発し、次に訪れたのは大都市「カルディナ」。ここはラグナスに挑む冒険者たちが多く集まる拠点でもある。冒険者ギルドで情報を集めた結果、「魔力中和石」はカルディナの魔術師協会で取り扱われているとわかった。


 俺たちは協会を訪れ、古びたローブをまとった老人と交渉を始める。


「魔力中和石が欲しい?あれは簡単に作れる代物ではないぞ。」

 老人は鋭い目で俺たちを見つめる。

「お前たちがラグナスに挑むというのなら、それなりの覚悟を見せてもらおう。」


「どういう意味だ?」

 俺が問い返すと、老人は微かに笑い、背後の棚から大きな箱を取り出した。


「中和石を渡す条件として、試練を課す。これを乗り越えられなければ、ラグナスなど行かないほうがいい。」

 試練の内容は「魔力の制御」。魔力を視覚化する特殊な装置を使い、制御の才能を試されるというものだった。俺は魔法の知識も経験もないが、分析スキルがある。この力を使えば何とかなるはずだ。


 装置に手をかざすと、内部の水晶が淡い光を放ち始めた。そして、頭の中に直接、魔力の流れがデータとして流れ込んでくる。


「なるほど、魔力の流れを安定させるだけか。」


 集中して意識を操作し、流れる魔力を調整する。視聴者からのコメントも見えた。


[分析結果]

 試練内容:魔力流のバランスを3分間維持

 成功条件:過剰反応の抑制と弱点補強


  • 「あいつ、なんでそんなに余裕なんだよw」

  • 「分析スキルって万能すぎだろ。」

  • 「こいつ、本当に初心者か?」


 やがて水晶が安定した光を放ち、老人が満足げに頷いた。

「合格だ。お前には中和石を渡す価値がある。」


 そう言って手渡されたのは、手のひらサイズの青い石だった。これがあれば、ラグナスの障壁を突破できるはずだ。



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