第6話 暇を持て余した神々

「Aランク……!これ、ヤバいだろ!」

 リックが剣を構えながら叫ぶ。俺も緊張しながら視界に流れるコメントをチェックする。


  • 「無理ゲーだろこれ。」

  • 「魔力核狙えばワンチャンあるぞ。」

  • 「光属性攻撃がないと詰む。」

  • 「こいつが倒せたら超高評価入れるわ!」


「光属性攻撃なんて俺にはないぞ……どうすればいい?」

 思わずつぶやくと、画面に新たな通知が表示された。


「視聴者【光の神エリアス】が『光の剣』を贈りました。」


 目の前に眩い光を放つ剣が出現する。迷っている暇はない。俺はその剣を握り、リックと共に影狼の王に向かって突撃した。


 影狼の王は素早い動きで俺たちを翻弄するが、「完全分析」の力で動きを予測し、光の剣を駆使して闘う。リックが注意を引きつける間に、俺は影狼の王の心臓部を目指して突進した。


「ここが……お前の弱点だ!」

 光の剣を心臓部に突き刺すと、影狼の王が咆哮を上げ、暗闇が一気に晴れる。戦いは終わった。


 視界に再びコメントが流れる。


   • 「ナイス!最高のフィニッシュだった!」

  • 「初配信でAランク討伐とか有望すぎ。」

  • 「これからも見続けるぜ!」


 同時に、「配信評価」として謎のポイントが加算される。それが何に使えるのかはまだわからないが、どうやらこれが「異世界ライブ」の重要な要素らしい。


 戦闘が終わり、リックが俺に問いかける。

「お前、本当に何者なんだ?あの剣も、あの力も……全部、普通じゃない。」


 俺は肩をすくめ、答えた。

「正直、自分でもわからない。ただ、この『配信』が俺の新たな武器だってことは確かだ。」


 これからどうなるのか――俺は、この「異世界ライブ」がもたらす力と影響を理解し、この世界を生き抜く新たな戦いに挑む覚悟を決めた。


 影狼の王を討伐し、ダンジョンを後にした俺たちは、無事にベルド村へ戻った。ギルドで報告を済ませると、村人たちが歓声を上げて迎えてくれる。影狼の王による被害を防げたことで、村全体が救われたのだ。


 だが、その感動の渦中でも、俺の視界には配信のコメントやポイントが浮かび続けていた。


 宿に戻り、ようやく一息つくと、画面上に新たな通知が現れる。


「異世界ライブ終了。視聴者評価ポイントを計算中……」


「累計評価ポイント:5500。報酬を受け取りますか?」


「報酬?どういうことだ?」

 疑問に思いつつ、「受け取る」をタップしてみると、目の前にアイテムが実体化した。


[配信報酬]

  • 高級ポーション ×3

  • 金貨 ×10

  • 謎の巻物 ×1


 ポーションと金貨はすぐに役立つだろう。だが、巻物には奇妙な文字が書かれている。分析スキルを使って内容を確認してみた。


[分析結果]

 名前:神々の契約書

 効果:神霊との特別な契約を結ぶことで、新たなスキルやアイテムを獲得可能。使用には特定の条件が必要。


「神々……やっぱりこの配信、ただの娯楽じゃないな。」


 配信を通じて見ている「視聴者」たちは、ただの人間ではない。彼らはこの世界の上位存在――いわば「神々」だ。そして、この配信そのものが、彼らにとっての「ゲーム」や「娯楽」になっているのだろう。


 その時、頭の中に直接声が響いた。


 ―初めまして、新人配信者よ。我々の世界へようこそ。


 その声はどこか楽しげで、同時に底知れない威圧感があった。俺は咄嗟に応じる。


「誰だ?お前たちがこの『異世界ライブ』の仕組みを作ったのか?」



「その通り。我々はこの世界を監視し、そして干渉する者。君のような存在を選び、この世界での『物語』を見守るのが我々の使命だ。そして暇を持て余した私たちの遊びだ。」


「使命って……結局は遊び感覚じゃないのか?」


「遊びであり、使命でもある。我々にとって、この世界の動きそのものがエンターテインメントなのだからな。」




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