異能戦線
@Ka-No-Se
第一話【ガチャ】
ピピピピッピピピピッ。
「朝か。」
眠い目を擦りながら時計に目をやると、六時十五分・・・。
やばい、バイトに遅れる。
急いで支度をし、家を出る。
バイト先までは普通に自転車を漕いで十分、バイトのシフトが六時半から。
ちょっとやばいかも。
「はあ、はあ、はあ。」
なんとか、間に合った。
「久積君、おはよう。珍しいね、こんなにギリギリなのは。」
バイト先の同僚、そして学校のクラスメイトの塚口さんが話しかけてきた。
「そう?昨日は疲れてたのかも。」
「あー!そういえば昨日の体育、シャトルランだったもんね。」
「おーい、駿君達。しゃべってないで仕事してよー。うちがいくらゆるいからってサボりはだめだよ。」
店長の大岳さんに叱られてしまった。
「はーい。じゃあ行こっか。」
「うん。」
「やっと終わったー!」
塚口さんが嬉しそうに言う。
「いつもより機嫌がいいね。」
「あ、分かる?実は今日私の誕生日なんだ!」
全然知らなかった。
「全然知らなかったっておもったでしょ?」
「顔に出てた?」
「いや、そんな気がしただけ。」
「そっか。」
話がぜんぜん盛り上がらず、塚口さんはすこし気まずそうな顔をした。
「じゃあまた、学校でね。」
「うん。」
塚口さんと別れ、僕は家に向かって自転車を漕いだ。
「ただいまー。」
「おかえりー!」
本当に兄弟かと疑うくらい元気な妹の声に迎えられる。
「お疲れ様、朝ご飯できてるよ。」
「ありがとう、すぐ食べるよ。」
僕は急いでご飯を食べ、学校の支度をする。
「お兄ちゃん、先学校行くね、遅刻しないでよ!」
「わかってるよ萩璃、いってらっしゃい。」
「うん、いってきまーす!」
ご飯を食べ終え、僕も支度を終わらせた。
「いってきます。」
両親の遺影に挨拶をし、学校に向かう。
キーンコーンカーンコーン。
「週番、号令。」
先生に言われ、週番の生徒が号令をする。
「起立、気をつけ、礼。」
『ありがとうございました。』
四時間目が終わり、教室の中は騒がしくなる。
弁当を食べていると後ろの席で話している人たちの話が聞こえた。
「ねえ、石のガチャの噂知ってる?」
「え、何それ?」
「誰も知らない間に石のガチャが現れて、回すと超能力が手に入るんだって。」
「ただの都市伝説でしょ?あんたそういうの好きだよねー。」
「だって面白いじゃん!」
超能力か。そんなものが本当にあったら、こんなバイト漬けの生活からも抜け出せるかもしれないな。
まあでも、そんなものあるわけ・・・、
あった。
「ほんとにあるのか。」
下校の途中に今までなかったはずの灰色の、石のガチャを見つけた。
これがほんとに噂のガチャなのか?
もしかしたら、噂を聞いた人が悪戯でここに設置したのかもしれない。そんな物にお金は使えない。
でも、本物だったら?
・・・・・・・・・。
ゴトンッ。カプセルが出てきた。
珍しく好奇心が勝って、ガチャを回してしまった。
「これを開けたら良いのか?」
開けてみるとそこには紙が一枚入っているだけだった。
「感情?」
紙に書いてあったのは【感情】の文字だけ。
カプセルを開けても何の変化も見られない。
やっぱりただの作り話か。百円損したな。
もったいなかったなとも思ったが、噂の真偽が確かめられただけ良しとしてバイトに向かった。
「ふう、疲れたな。」
バイトが終わり、家路に就いているとこちらをじっと見てくる男がいた。
僕の知り合いか?
いや、それはないな。明らかに友好的な雰囲気ではない。
気づいていないふりをしてやり過ごそう。
だんだん駿と男の距離が縮まっていく。
「おい。」
突然、男が話しかけてきた。
一応周囲を確認するが、僕と男以外に人はいない。
「僕ですか?」
「お前以外居ねえだろ。お前、最近石のガチャ回をしただろ?」
なんで分かったんだ?
「はい。見てたんですか?」
「いや、見てなくても分かる。紙にはなんて書いてあった?」
口振り的にこいつもガチャを回したことがあるっぽいな。
見てなくても分かるってどういうことだ?
「早く答えろ。俺は待つのが嫌いだ。」
男が不機嫌そうに言った。
「感情です。」
「感情か、聞いたことねえな。能力はもう使ったのか?」
「能力って、あのガチャは本物なんですか?」
「何だお前、何も知らないんだな。特別に俺が教えてやるよ。」
あのガチャが本物だとすると、こいつも何らかの能力を持ってるのか?
だとすると僕に話しかけてきた目的は何だ?
「あのガチャは本物でカプセルを開けた奴が能力を手に入れられる。中の紙に書いてあるのはその能力の名前だ。実際にどんな能力かを知るには名前を頼りに検証していくしかない。」
こいつの話は本当なのか?
いや、こいつがあのガチャを設置した張本人で僕がからかわれている可能性もあるし、一旦話を全部聞いてから判断するか。
「俺の仲間にならないか?能力は結構かぶることもあるんだが、お前の能力は聞いたことがないレアな能力だ。俺にとっては貴重な戦力になるし、お前は他の能力者に襲われた時、俺に助けてもらえる。Win-Winな関係ってやつさ。」
変に返事して闇バイトとかに巻き込まれてはいけないし断っておくか?
でも、こいつの言ってることが本当なら断ったときに何をされるか分からないな。
「早くしろ、俺は待つのが嫌いだと言っただろ。ま、お前には『はい』以外の選択肢なんてねえけどな。」
男はそう言いながら手に電気を纏った。
「返事がねえなら強硬手段に出るしかねえな!」
男はそう言って僕に向かって走ってきた。
やばい、逃げないと。
焦りながらだったからか、うまく自転車に乗れず男に首を掴まれてしまった。
「素直に俺に従ってればこんな事にならずに済んだのにな。死なねえように手加減してやるから安心しろ。」
バチバチッ。
駿の体に電気が流れた。
「ぐあああああああああああああ。」
これはひどい、痛いなんてもんじゃない。言葉で表しようがない程の苦痛だ。
このあと僕はどうなるんだ。殺されるのか?
瞬間、駿の頭の中は過去のトラウマで埋め尽くされた。
恐い、恐い。誰か・・・助けてくれ。
「うわ!なんだよコイツ!?」
突然、男はそう言いながら駿から離れた。
痛みが弱くなった。
助かった、のか?でも視界が赤い。
これは血なのか?いや、炎?
だめだ、意識が・・・。
体の痺れと安堵感から、駿は気を失ってしまった。
異能戦線 @Ka-No-Se
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