第7話初めての友?
「全員終わったな。お前ら仲良くしろとは言わんが、問題だけは起こすなよ。」
「問題を起こしたら
立花女史よ、そう言いながらこっちを見るのやめて欲しいんだけど……圧がエグい……
「よろしい。同意も得られた事だし、次はカリキュラムについてだ。」
「資料の記載通り、基礎教科以外は自身で決めろ。
それと基礎教科も受講は義務ではない。
既に学外で仕事をしいてる生徒は出席出来ないだろう?
基礎教科はテストの点が良ければ、ポイントが貰えるものだと思っておくぐらいで丁度良い。
成果を出し、社会に貢献した奴が評価されるからな。」
「さらに言うと、極論全ての授業をボイコットして、アルバイトや動画作成でポイントを稼いでも構わん。
ただ、私の持論だが、教養の無いものは一流にはなれんよ。
例え、運良く道が拓けても、その道が閉ざされた時、次がないからな。」
「今日から1週間、体験授業を受講出来るので、興味のある生徒は行ってみるのも面白いかもな。
以上でホームルームを終了する。」
さて、これからどうするか……
入学して早々おさらばするつもりだったが、
大見得切った手前、逃げ出すのは俺のプライドが許さないし、頂点になって見返してやりたい気持ちもある。
だけど一番は、特別推薦枠で入学した俺が退学になれば、
ひよりに迷惑が掛かることだ。
俺の退学は推薦者のひよりも高確率で責任を取らされるだろう。
そうなると、アイツが目指してるプリメイラ エストレーラが遠のいてしまう……
消極的ながらもやる気を出している俺に、一人の男が声を掛けてきた。
「へい大将。先の自己紹介良かったで」
すげぇ馴れ馴れしく話し掛けてくるコイツは確か、魚住とか言うヤツだ。
大将とか呼んでるけど、俺の名前は鷹取だし関係ないだろ
そう思い無視していると、再度、魚住が話し掛けてくる。
「おーい、聞こえてますか~」
イラッ。コイツ…人の顔の前で手を振ってくるのウゼェ。
しかも、人をバカにしたような声で煽ってきやがる……
「もしもーし」
……が、我慢だ俺。とりあえず握りしめた右手の力を抜こうぜ。クールにいこう。
あっ、でも、次煽ってくるとぶっ飛ばすかも……
「ハァ……俺、芦屋ひよりの大スクープ持ってるねんけどな~」
「あ、なんだって!?」
あっ…幸い手は出なかったが、口が出てしまった……
手が出てたら入学して早々停学にでもなって、
ひよりにゴミを見るような目で説教されるところだったぜ。
いや、それはそれでアリか……?
「なんや聞こえてるやん」
「うるさい。そんな事はどうでもいいから、先のを詳しく聞かせろ」
「勝手なやっちゃな……
まあええやろ、特別に教えたるわ。」
「一昨日の事やけどな、芦屋ひよりがベルメゾン・コンフォートってマンションに入っていったんや。
どこの部屋に行ってたか調査中やけど、芦屋ひよりの住んでるマンションとは違う所やから何かあるわな。
それに変装までしてたから、あれは男に会いに行っとるに違いないわ」
「げ、ゲホッ、ゲホッ……」
「急に咳き込んでどないしたん。まさか芦屋ひよりに男がいてビックリしたんか?」
ひよりの奴、見つかってんじゃねぇか!
ヤベェ……引っ越してるからそう簡単には見つからないと思うけど、俺があそこに住んでたってバレたら絶対疑われるよな……
「さ、さあ? ひよりに彼氏がいるなんて聞いた事はないけどな」
「ヒュー♪、芦屋ひよりの事を名前で呼んどるんかいな!
確か、芦屋ひよりが自己紹介の時に、1年間一緒に暮らしてたって言ってたし、自分なんか知ってるんちゃう?」
あ、やべ、ついひよりの事を名前で呼んでしまった……
今度から芦屋さんって呼んだ方が良いのか?
でも、呼び慣れてないから凄く違和感がある。
「いや、ひよりと住んでたのは小学生の時だから、
特に何も知らんぞ」
「またまた~、芦屋ひよりも大将の事気に入ってるみたいやし、何か知ってるやろ?」
「しつこいな。何も知らんって言ってるだろ!」
「左様か……じゃあ大将。俺と友達になってくれん?
大将と一緒にいたら芦屋ひよりの情報ゲット出来そうやし」
「……」
コイツ……俺を使って、ひよりの事を調べるつもりか……
もういいか……
問題起こしたらひよりに迷惑掛かると思って抑えてたけど、
どのみち、ひよりの障害になるのなら、早めに処分した方が良さそうだな
俺は魚住の喉元に手を添えて、殺意を込めてゆっくりと口を開く
「ひよりの事をこれ以上調べてみろ、消すぞ。魚住。」
「ヒィ……」
「ひよりに不利益な事をしても消す。それと、金輪際俺に近付くな。」
「……」
完全に恐怖に縛られた目だ。
これでコイツは、ひよりに対して何も出来ないだろう。
まあ、何かしたらその時は……
俺は魚住から興味を無くし、改めて今後の事について
考えていると、性懲りもなく再度魚住が口を開く
「ホンマにすまんかった。許してとは言わんから償いはさせて欲しい。」
「俺は、お前に金輪際近付くなって言ったんだが、伝わらなかったか?」
「い、いや、伝わっとる。」
「じゃあなんで話し掛けてきた。マジで消すぞ。」
「ッ……、その目や。俺はアンタの人をまるでゴミのように思ってる目が気になるんや。
今まで、俺は色んな奴と会ってきた。
でも、そんな目をした奴はいなかった。
だから、そんな目をしているアンタの事が気になるんや。」
「好奇心は猫を殺すって言葉知らないのか?」
「知っとる。でも俺は知りたいねん」
「文字通り死んでもか?」
「ああ。知りたいことを知れる機会があるのに棒にふるなんて、俺の信念にもとる。
信念が無いまま生きるなんて死んだも同然や!」
コイツ……
バカかと思いきや大バカかよ。
ただ、信念の無い俺には出来ない生き方で、羨ましくもある。
コイツと一緒にいれば俺にも信念ってものが生まれるのか?
「お前バカだな」
「ああ。分かっとる。」
コイツは確かジャーナリストになりたいとか言ってたな……
だとしたら、ひよりに何かあっても、コイツがいれば使える場面も出てくるか……
「分かった。友達になってやる。」
「ホンマか!?」
「ああ、ただしひよりに対して不利益な事があれば消すからな。」
「ああ、それでええ。」
そう言うと魚住は右手を出してきた。
「なんだ?……握手のつもりか?」
「せや」
渋々、俺は魚住と握手をする。
何か改めてこんなことをすると、恥ずかしいな……
「にしても、大将。芦屋ひよりの事好きすぎやろ」
「は、ハァ!? 俺がひよりの事好きだって!?」
「そんな事ないだろ!」
「え~、どう見てもベタぼれやけど……
だって俺と友達になる条件が芦屋ひよりに不利益をもたらさない事やろ。
どう考えてもそうやん」
「うッ……うるさい! 大事な幼馴染みだから大切に思ってるだけだ!」
「その思うが、想像の方の『想う』とちゃうの?」
コイツ……俺の弱みを見つけたからって、調子乗りすぎだろ……
お前、先までビビっていたくせに……
俺達が騒いでいると、当の本人であるひよりが取り巻きを連れてこっちにやって来た。
「翔真さん楽しそうですね。お友達が出来たのでしょうか?」
「いや、コイツは友達なんかじゃないぞ」
「ウソやん!? さっき友達なってくれるって言ってたやん!」
「あー、あれは仕方なくだ。
今は友達(仮)みたいなもんだな」
「なんなんそれ! 早く(仮)とって欲しいわ。」
「ふふ、翔真さんが楽しそうで良かったです」
「楽しかねぇよ……ひよりの方こそどうなんだ?
いや、愚問だったな。忘れてくれ。」
ひよりは取り巻きこそ沢山連れてるけど、取り巻きから特別な友達を作ると、ソイツが爪弾きにされるのが目に見えてるから、ひよりはあえて作ってないみたいだ
「いえ、大丈夫です。」
「では、魚住さん私とも友達になって下さい。」
「う、うぇ!?俺なんかが友達で良いんですか?」
「はい。翔真さんが選んだ友達でしたら、良い方だと思いますので」
「は、はい。分かりました」
「では、今日からお友達ですね!」
ひよりに押しきられたな魚住。
にしても魚住の奴、緊張してたのか、ひよりの前では関西弁消えてたな……
この学校で初めて友達?を作るとこに成功した俺は、
今後事を考えながら、ひよりの笑顔で真っ赤になった魚住を見ているのだった……
元神童は人と関わりたくない クー @gucci0313
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