第6話
今日は朝から空気が重かった。
「これが最後の朝食になるんだね」
サイ言葉に皆がため息をついた。
無言の空間が流れているとレイがポケットから何かを出した。
「実は、皆さんにプレゼントがあります。
これ、指輪です。家族である証の。
これを5人でつけてください」
わーっと皆が一斉に喜んだ。
「とても嬉しいよ。でもレイの分は?」
「え?」
「シロの言うとおりだよ。俺たち家族じゃん」
ソルが言うと皆が一斉に頷いた。
「嬉しいです。私も同じものをつけます」
泣きそうになりながら喜んでいる声を聞いて一気に空気が軽くなり和気あいあいと話し込んだ。
最後の食事も終わり、すぐに出る準備を始めた。
そして最後の挨拶を交わす。
それも終わり、指定された位置へ行くとすでに攻撃が始まっており、人々の悲鳴が聞こえていた。だが僕たちは気にせず前を向いた。
位置につき、それぞれの国の騎士に保護された。
別れる時皆で指輪を空へ掲げ、また会う日に向けて一歩踏み出した。
そこからは早く、1日にして国は滅び、数日間かけてエニス王国へと向かった。
「シロ、サイ、もうすぐ街につくよ。何か聞きたいことはある?」
「ありがとう、でも大丈夫だよ」
指輪のついた手を強く握りサイが答えたのを見て僕も力が入った。
街に着いた。フリーデンとは違い、活気があって鮮やかな街だった。
「見たことないものばかりだね、シロ」
「うん、なんだか夢の世界みたいだよ」
「必ず僕たちのやるべきことをやり遂げよう」
「もちろん」
そこからは目まぐるしい毎日だった。
僕たちはすぐに研究所に入ったが、外部から来た人間をあまり快く思わない人もいて相手にされず、雑用どころか掃除ばかりしている日もあった。
それでもサイは諦めずに多くの人に話を聞き自分の知識を蓄えていた。
そんなサイに負けないよう僕も一生懸命働いた。
半年が過ぎるころには、サイの努力が実り実際に研究に参加し、次々と新しいものを作り上げ評価も鰻登りだ。でも必死すぎるサイが少し心配でもあった。
「サイ、少し休んだら?ここへ来てから一度も休んでないし、毎日あまり寝てないよね」
「ありがとう、でも僕は大丈夫だよ。家族のためならいくらでも頑張れる。きっと本当の家族もこんな感じなんだろうね」
「そうなのかな。でも無理しないでね。僕にも手伝えることがあるならいくらでも」
「ありがとう、でも本当に大丈夫だよ」
それから数日が経った頃評判を聞きつけた宰相が研究所に顔を出した。
「これはこれは、ウィリアム様。こんなところまで足を運んでいただきありがとうございます。本日はどのようなご用件で?」
「所長さんですか。最近調子が良いと聞きまして。どなたですか?サイという人物は」
「私です」
「あー、君か。さすがは優秀だね、君を連れてきて本当に良かったよ。そしてそんな君にお願いがあるんだ」
「何でしょうか?」
「戦争で使う武器作れるかい?遠距離での攻撃で使える。もちろん君達の友達のいる国には使わない。出来た暁には特別な褒美も与えるよ、どうかな?」
「本当ですか!?でも...」
「ダメだよ、サイ!争いは、ダメだよ...」
「魅力的なお話ではありますが、私の実力ではそのような物は作れません」
「チッ、まあいいでしょう。考えておいてください。では」
それだけ言うとウィリアムは僕を睨みつけ、研究所を出て行った。
「ありがとうシロ、なにか大事な物を失うところだった」
「サイのことは僕が支えなきゃだからね」
その後もサイは所長から何度もお願いされたが断り続けていた。
それから少し経ったある日、僕の体に異変が起きた。
「シロ、ここ最近熱みたいだけど大丈夫?」
「うん、今は大丈夫。だけどたまに身体中が痛むんだ」
「医者に診てもらった?」
「診てもらったけど何かわからないんだって。風邪じゃないか?とだけ」
「うーん、そうか。僕の方でも調べてみるよ。だから安心してゆっくりしていて」
そう言うとサイは研究所に戻って行った。
だから僕ももう一度眠りについた。
その日の夜もう一度サイが見舞いに来た。
「シロ!朗報だよ!エニス王国1番の医者が診てくれるそうだ。前に所長に話したら紹介してくれる。ここから西にしばらく行ったところにその医者がいるんだって。しかも護衛もついてくれる。きっとこれで良くなるさ」
「ほんと?ありがとう。いつ出発になるのかな?」
「早速明日向かうそうだよ。護衛にはレイもついてくれるからね。今は安心して眠るといい」
「うん、おやすみ」
だが今日はなかなか寝付けなかった。それに変な夢を見た。森の中をずっと走る夢。その時はまだ何もわからなかった。
5人の戦士 agasaokura @agasaokura
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