真相
再び『らぁ麺 ハカマダ』の店長が様子を見に来て、警察が連行していったのを見ると、呆れと安堵の表情を浮かべた。鉢巻きをとって汗を拭う。
すると、『ゴールデンスランバー』の店長も微笑みながらやってくる。
「あの方、そちらのラーメンを食べに来る度に、不運に遭っていたようですよ」
「え、そうなんですか。
それで『被害者だ』とか何とか言ってたのか。逆恨みですな」
ラーメン屋の店主が目を細める。
「ただ、私が話を聴くに、どうも自業自得じゃないか、と言う気がしましてね。
オレンジ色のペンキをうちの工事業者にかけられた、と言うんですが、確認したところオレンジ色なんて使っていませんでした。
でね、その頃ちょうど駅前のベンチがオレンジ色に塗り替えられて、『ペンキ塗りたて』と張り紙がしてあったのですよ」
「多分それでしょうな」
「ええ。私もそう思います。
次の時は、バイクで泥水を跳ねられたということでしたが、それも立て看板で注意が書いてありましたね。
何より、朝からの雨にもかかわらず傘を持参していなかったようなのです。
私は見ていましたが、前に並んでいる人の傘に、体を無理やりねじ込むようにして、雨を凌いでいましたよ」
「まったく、モラルのない人間ですな。
傘を忘れたくせに、びしょびしょになって文句を言うなんて」
二人のため息が重なって、思わず小さい笑いがこぼれる。
「ああ、あとそちらのバイトさんにスープを浴びせられた、と駆け込んで来たこともありました」
「なんと、あいつがその客だったのか!
店の裏にスープを処理しに行った時、なぜか男が後ろについてきていて、うっかりスープをかけてしまった、と報告してくれてたんですよ」
「ほう。
でも、なぜ裏なんか行ったんでしょう?」
「男は手元ばかり見ていたらしいですから、行列の前の人と間違えて、店員の後ろを、阿呆みたいについていったんじゃないですかね。
それもやはり、自業自得ですよ。何を勘違いしたのか、復讐でもしに来たんでしょう」
洋服屋の店主は、合点がいったように静かに頷いた。
「ところで、どうです? 開店してから数ヶ月経ちますが。
客商売の大変さが身に染みてきたでしょう。ああいう客も相手にしないといけないのですよ」
「いやあ、あんなのは客とは呼べません。
全然〝参考にならない〟ですよ」
「よっしー♪ のレビュー
今年94杯目
前回、野良猫におしっこを引っかけられた雪辱を果たすため、再度『らぁ麺 ハカマダ』に挑戦……!
あの時は悲惨だったなあ……。(前回のレビューはこちら)
(中略)
※以下、余談
今日は鶏白湯ラーメンにしよう、と心に決めたその時、またしてもトラブルが……!
鼻息の荒い男性が、行列に並ぶおいらたちに向かってきたかと思うと、『並ぶのやめろ!』と叫んだのだ……!
脂ぎった顔面に、ここではないどこかを見ているような目つき……。めっちゃコワかった……。
恐怖の数分ののち、警察が来てくれてことなきを得たが……。何か恨みでもあったのだろうか……。
お店の方に聞くと、たびたび店の前に現れては同じことを繰り返して、警察署に連行されているのだとか……。恐ろしい……。
たまに狂人が湧くらしいので、皆さま、ご注意を……!
ただ、店の外のことはラーメンには関係なし……!
鶏白湯も期待を裏切らず絶品だったので、星4.5です……!」《参考になった 867件》
フクメン調査 はいの あすか @asuka_h
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