第十三話「おしまい!」
「……あんたらねえ」
学校近くのファミリーレストランの二人席。その壁側にもたれ掛かって私の報告を受けていた美沙が、ため息混じりに呟く。
「暗がりをイイコトにイチャコラって……。ホントは私の助けなんていらなかったんじゃないの? なに? 惚気の使い手、ラブマスターなの?」
「いや、覇気も念能力も使ってないけどね……」
「だったら、幽波紋じゃあないの? どうする? パスタ頼んどく?」
「美沙にも、シール貼って分けてあげようか?」
私がやや挑発的に言うと、Qooのりんご味を飲んでいた美沙がいきなりむせ始めた。
「え? なにあんたら、もう一つになって壊れるの?」
顔を赤くして尋ねる美沙に、私の嗜虐心が煽られる。
自分でもどうかとは思いながらも、私はいやらしい笑みを浮かべて、
「そうだよ〜。でもまあ、弾丸は蹴れないけどね。まだ」
と返した。
「ったり前でしょ!」
途端、美沙が両手を机に叩き付けて立ち上がる。
目を白黒させて戸惑っている美沙の表情には、普段の余裕がない。
してやったりと思う私だった。
「もしなにかあっても、並行世界から自分を連れてくれば大丈夫!」
「えげつな……」
D4Cを唱える元気すらなくなり、ぐったりとソファに座り込む美沙を見て、少しやり過ぎたかな、と反省する。
「……まあ、本当に何かあったらまた相談するかもだけど。いい?」
「うん、もちろん。時間止めて、空飛んで、なにがあっても駆けつけるから」
「うわぁ。既に人間やめてるよ、この人。夜しか来れないなんて……」
「私、究極生命体だから。太陽克服してるから」
「一味………違うのね………」
そこまで言って、私たちは二人して笑ってしまった。
本当、美沙にはいつも勇気をもらう。
決めた。明日の帰り道、彼に私の話をしよう。
辛くて苦しい、深い海の底にも彼の光は届くから。
がんじがらめの平和でも彼となら大丈夫だと信じて、私はお姫様のベールを脱ぐのだ。
震えない指でフォークを持って、私たちは注文していたパスタを食べる。
当たり前だけど、どこにも棘はなかった。
青いばら 筆名 @LessonFine
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