遺されたもの
契約は成った。
永く生きてきて、人間と契約を結ぶことは何度もあった。だが、子守りなどという牧歌的な願いを引き受けたのは初めてだった。怒りを抱えた者が願うのは復讐や支配がほとんどだったから、大層面食らった。
へまをしてオークションにかけられるなんて失態を演じた罰だと思った。
どんな魔獣よりも強く気高い自負があったのに、下等な生き物達に囲まれて品定めをされた屈辱が消えることは無かった。
契約者の子供は、呪いをそっくりそのまま親から受け継いだ。それは悲惨なものだった。内に抱える怒りも父親に似て醜く愛らしかった。契約者の魂と親子二代の怒りは、私を爆発的に成長させた。
封じられた魔王を喰らうまでになるのにそこまで時間はかからなかった。
契約で私はあの男の子供が死ぬまで側に仕えていなければならないが、その後は自由になる。
たらふく腹に収めた怒気と魔力でもって、この世界を蹂躙するのが今から楽しみでならない。もちろんオークションに参加していた面々から先に血祭りにあげてやるのだ。
あの男が、どこまでこれを見越していたのか今となっては知りようがない。
地獄に帰った時に聞いてみようか。ああ、いや、魂は食ってしまったのだった。少しだけ、悔やまれる。
魔王 惟風 @ifuw
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