【3話】時空の狭間

「ってめえ、俺を知らないのか?この街で一番強いのはこの俺、モルディだぞ。」



「リューガさん.....無茶っす!!貴方、特殊スキルの使い方否や作り方も何も知らないんすよ!?」


『フルトマ、うるさいな。』



フルトマは一瞬びっくりしたような様子でこっちを見てきた。


 

『俺ねぇ、飲み込み早いんだ。』


「おい、早くしろよ。宇宙人と交信は程ほどにしてくれや。」



モルディは鉄鋼のようにきらびやかに輝いた特殊加工の鞭のようなものを取り出した。


俺は今日、訓練場の貸出の長い剣を借りた。   



「いいんだな、知らねぇぞ死んでも。」



『はっ、死んでたまるかよ。』



モルディは勢いよく床を蹴り飛ぶ。

バシュンという音を立てながら鞭は顔のすぐそこに飛んできた。



『っ、あっぶね。』



俺もすかさず走る。


この際死んでも元の世界に戻るかもしれないし、やんなら日和らずやってやるよ。



「俺のスキルで溶かし殺してやる。」



「リューガさん、まずいっす!!!!!」



「【氷鞭】!!!」



バリリリリリリリィン


鞭が当たった床は氷が割れる音を立てながら凍りつき割れた。



やばいまずい。こんなん直で当たったら死ぬ。間違いない。




「リューガさん............」



ジブンはリューガさんにできることはないのか?

お供のスキルがあるからジブンはリューガさんと組めたのではないのだろうか。




「僕ももう、命懸けるっすね。」



「【転換】」



『フルトマ!?!』




フルトマはシュルシュルと俺の剣の中の気として入ってくる。

ドクドクと剣の鼓動を感じる。



___________いや、まてよ。




相手の鞭が床に跳ねるタイミング、かすかに見える無の空間。


相手の気が鞭とともに跳ね上がるそのタイミング。


一瞬、その時だけ時空が遅くなる。




「殺してやるよ、チンチクリン。」




バチイイン




______ヒュン



『ここだ。』



俺は時空が歪んだタイミングに長い剣に体重、重量、気圧のすべてをのせてモルディへと振った。




“ドッバン!!!!”




剣を振りかざした瞬間に鈍い音がこの場全体に叩き響いた。




「は______」




埃が舞い落ちた床のふもとにぱたりと座り込むモルディの持つ鞭は、汚く焦げ落ちていた。




『や..............やった?』




ヒュルルルとまた軽く焦げたフルトマが剣からポリゴンと化して戻ってきた。



「リューガさん、やってるっすね。」



『やったよな、やった。』




「お前ら....何もんだよ。切れるはずが無えんだこの鞭。【特殊加工】が施されてる。」


 

「お、おかしい。切れるはずねえんだ。」



「俺がまた来たら、リベンジだ。今度は新品ぴかぴかの鞭で絶対に。絶対に殺したい。」




『また焦がしてやるよ。』




モルディはヘナヘナと施設を出て行った。


ぱたり、とすべての疲れがどっときて座り込んだ。




『はぁぁ、死ぬかと思ったぁぁ。』


「そっすね、ジブンももう星への帰還は諦めかけてました。」



『.....でもなんで、加工された鞭が焦げたんだ。』





「これはあくまでジブンの仮説っすけど.........もしかしたらリューガさん、【呼空間こくうかんの器】かもしれないっす........。」




『ん、何それ。』




「ジブンはお供のスキルがあるんで、お供している主人の視界とライドすることができるんです。その時、ジブンも驚きました。攻撃が終わった瞬間の時空が重く、遅くなるんです。異能力者の中にいるんです、ほんの一握り、いや、千年に一度くらいの確率で、時空を司る特殊スキルを持つハンターが。」



『お.....俺が千年に一度.....?』



「時空が遅くなった瞬間に、ジブンのサブスキルである【炎撃】をしたことで、特殊加工も突き抜けたんだと思うんすよ。」



『な......なるほど?』








(あれ、もしかして俺は【英雄】、余裕なんじゃね...............?)




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不時着した宇宙人、【無双スキル】を手にした最強の転生者の『俺』と出会う。 @CH_wnlv2249

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