おっさんは雨降りの中でぼやく

入江 涼子

第1話

 俺は雨降る中、黙々と歩いとった。


 傘は差しとるが、けったくそ悪いわ。さっき、家で嫁さんと喧嘩したさかいな。あー、嫌や。気分がクサクサするなあ。しゃあない、ラーメン屋にでも行こか。俺は近所の中屋ラーメンに向かって歩き出した。


 中屋ラーメンに着いたら、ガラガラと引き戸を開けた。


「らっしゃい!!」


「おう、久しぶりやな!旦那!」


 俺は旦那に声を掛ける。


「久しぶりやなあ、あんた。で、注文はどないしますか?」


「ああ、いつもみたいに。チャーシュー麺とギョーザ、ライスがええな」


「分かった、チャーシュー麺、ギョーザ、ライスでんな。ほな、今から作りますさかいに」


 旦那は頷くと、俺が頼んだメニューを用意し始めたんや。しばらく、暇になるからな。カウンター席の近くにあった棚に行って、新聞紙の1部を取る。そのまま、カウンター席の1番左側の端っこに座った。新聞紙を広げて読み始めた。


 しばらくして、旦那が声を掛けてきた。


「さ、できましたで。チャーシュー麺とギョーザ、ライスや。お待ちどおさん!」


「ありがとうな!」


 カウンターから、旦那が頼んだ品々を手渡しに来た。俺はラーメンやギョーザの皿を受け取り、自身の前に置く。最後にライスの盛り付けられた御碗も受け取った。割り箸を箸入れから出したのだった。


「……いただくとしますか」


 ボソリと呟き、ラーメンから食べ始めた。やはり、中くらいの太さの麺に醤油ベースのスープがよく合うなあ。ツルツルってイケるわ。次に、ギョーザもタレにつけた。

 かぶりつくと肉汁が口の中に溢れる。プリプリッとした皮に種の複雑な味わい、全てが美味い。ライスをかきこんだ。


「やっぱり、中屋に限るわ」


「おう、おおきに!」


 俺が言うと旦那が元気よく、返事をした。しばらく、食事に没頭した。


 ラーメンなどを食べ終え、お勘定を済ませる。旦那に別れを告げ、店を出た。

 ふと、空を見たんやが。七色のカラフルな虹が掛かっとった。ラッキーや、ええ事がありそうやな。

 ニヤリと笑いながら、家に帰るために店の横に立てかけとった傘を手に取る。家に向かって歩き出した。


 ――終わり――

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