深紅の契約者

眠音ネム

第一話「血塗られた誓い」

「お前には失望した、ヴェイン」


耳障りな声が、冷たい地下室に響く。

16歳にして騎士団長にまで上り詰めた俺への、最後の言葉がこれか。

皮肉めいた笑みが零れる。


極秘任務。その内容は「二人の少女の救出」。

だが到着した場所で待っていたのは、明らかな罠だった。


個室に繋がれていたのは、両足を失った少女と、目を潰された少女。

逃げることのできない囚われの身。彼女たちを救い出そうとした瞬間、背後から襲い掛かる殺気を感じた。


仲間の剣が、俺の右腕を切り落とす。

すべては王女の婿候補であるヴィクター・ローグレイヴの策略。王女の想いを知った彼の嫉妬が、この状況を作り出したのだ。


「ここで終わりだな」

「あぁ、終わりだ」


だが、終わるのは彼らの方だった。

右腕から滴り落ちる血が、不気味な輝きを放つ。

誰も気付かない。この瞬間に世界が変わることに。


「正義などで悪は消せない」

血に濡れた床を見つめながら呟く。

「なら、悪を以て悪を討とう」


血が蛇のように這い、かつての仲間たちの足元へと伸びていく。


「さらばだ、偽りの騎士たちよ」


血の奔流が地下室を染め上げる。


......


「もう...終わったの?」

少女が震える声で問いかける。

二人とも、この腐敗した世界の犠牲者だ。


「ああ、終わった。そして、始まる」

右腕から滴る血が、闇を朱く染めていく。


「おまえたちに選択肢をやろう。このまま死ぬか、それとも...」


「僕たちに...選択肢なんてあるんですか?」

足のない少女が、儚げな笑みを浮かべる。


「私たちは...もう...」

目を失った少女の言葉が途切れる。


「この血で、新しい足と目を与えよう。そして...」

俺は彼女たちに手を差し伸べた。


「共に、この腐敗した世界を血で洗い流そう」

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深紅の契約者 眠音ネム @Sleep1Ness

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