第2話
彩音は、メガネをかけた真面目そうな大学院生とペアになった。1ゲーム目の同じチームの人ではなかった。
「よろしく。坂本令です」
男性が右手を出した。
「種田彩音です。よろしくお願いします」
彩音も右手を出すと、令が彩音の手を握った。
1フレームの1投目は、彩音が投げた。ボールは右に曲がって、5本倒れた。2投目は令が投げた。ボールはトップピンに当たり、スペアを取った。令は、彩音の元に走って来てハイタッチを求めて両手を出した。
「イェーイ」
彩音は、その手に向かって両手でタッチした。2フレーム目は令が投げた。トップピンを捉えたが、右端の1本が残った。令の投げるフォームを見ながら、彩音の頭上から、突然、
「この人と結婚する」
という言葉が胸に降りてきた。
「うそ?やだ」
彩音は何が何だかわからなかったが、令は、彩音の好きになるタイプではなかった。どちらかと言えば、1ゲーム目のグループの一人は、しゃべった感じが良かった。
彩音は、胸のもやもやが晴れないまま、ボールを投げ、最終フレームを迎えた。彩音が7本倒した後、2投目の令がスペアを取り、最後の投球は彩音が9本倒して、ペアの中では2位だった。
1位は、麻里と、彩音がいいと思った彼だった。
そのまま8人は、予約していた居酒屋に行き、ボーリングの話を皮切りに会話も弾んで、楽しい時間を過ごした。また、次回の再会を約束して、ライングループを作り、それぞれにタクシーや電車に乗って家路に向かった。彩音は駅に向かう四人の方に入った。令も電車組だった。後の二人は、ボーリングではビリだったが、息があったようで、駅に行く途中で二人でもう一件行くと言って別れた。
令と二人で電車に乗った彩音は、少し緊張していた。
降りる駅は、令の方が一駅後だった。
「じゃあ、おやすみなさい」
先に降りる彩音が、令に軽く会釈して降りると、彩音に続いて令も電車を降りた。
「もう遅いから、家まで送るよ」
断るにも、電車は発車してしまった。
「すみません」
彩音は仕方なく、送って貰う事にした。
家の前まで来ると、令は、
「今度の日曜日とか、二人で会えるかな?」
と言った。
彩音は、断る理由が見つからず、
「はい。今日は送って頂いて、ありがとうございました」
と言って頭を下げると、家に入って行った。
令は、彩音が家の中に入るまで、彩音の後ろ姿を見送っていた。
翌日のお昼過ぎ、令から彩音に個人的にラインが来た。
「日曜日だけど、映画はどう?迎えに行くよ」
「はい。ありがとうございます」
彩音も直ぐに返信した。
それからも、令からの誘いを断る理由が見つからず、彩音は、あちこちデートに連れて行ってもらった。
そんな事が続き、就職して二年が経とうとしていた時、ホテルの最上階の、薄暗い雰囲気のバーでカクテルを飲んでいた時、令は思いきって、
「彩音、結婚しよう」
と、緊張しながら彩音に、指輪を差し出してプロポーズしてくれた。
「はい」
彩音は、指輪を受け取りながら、神様のお告げはあると、確信していた。
神様のお告げ @rui-turuta
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