神様のお告げ

@rui-turuta

章タイトル未設定

第1話

結婚相手と出会う時、よく、「教会の鐘が鳴った」とか、「雷に撃たれた」とか言う人がいる。

「何馬鹿なこと言ってるの」

と、種田彩音は思っていた。

大学も4年生になると、学校に行く日も少なくなり、週に1日、しかも午後だけだったりする。

彩音は、一週間振りに大学に顔を出した。

講義が終わり、教室を出ると、親友の中根麻里が彩音を見つけて駆け寄って来て、

「ねえ、今夜空いてる?」

と訊いて来た。

「空いてるけど?」

彩音が答えた。

「じゃあ、合コン行こっ」

麻里は、彩音の正面にまわって顔を近づけて来た。

「ちかっ。わ、わかった。行く」

彩音は、しぶしぶ頷いた。

「よし、決まり。6時からだから、5時半にハチ公前ね。私、バスの時間だから。じゃあ、後で」

麻里は、そう言うと走り出した。

彩音も歩を早めて自転車置き場に行き、自転車に乗ると、ペダルに足を掛けて漕ぎ出した。

「ただいま」

彩音が玄関のドアを開けると、

「お帰り」

リビングから母親の小百合が答えた。父親は彩音が、高校二年生の時、病気で亡くなった。姉が一人いるが、結婚して長野に住んでいる。

「今日、麻里とご飯行く事になったから、夕飯いらない」

彩音は、小百合にそう言うと、二階に上がって行った。

「良かった。今から支度するところだったの」

小百合が彩音の背中に向かって言った。

彩音は、シャワーを浴びて、水色のノースリーブのワンピースを着て、白いカーディガンを羽織ると、薄く化粧をした。

時計を見ると、5時になるところだった。彩音は、ショルダーバッグを肩に掛け、リビンクの小百合に、

「行ってきます」

と、声を掛けた。

「行ってらっしゃい」

小百合が軽く手を挙げた。

今時、ハチ公前で待ち合わせもないだろうが、麻里は小学校の時の担任に聞いた、忠犬ハチ公の話に感動して、渋谷に行く時は必ずハチ公に会いに行く事にしているらしい。

電車で二駅乗ってハチ公前口から出ると、麻里の他に女性が二人、微かに見覚えのある顔が立っていた。

「ごめん、お待たせ」

まだ、約束の5時半にはなっていなかったが、反射的に彩音は謝ってしまった。

「私達も、今来たところよ」

麻里が言うと、他の二人も頷いた。

「さっき、男性陣から電話来て、飲む前にボーリング行きませんかって言われたから、いいよって言っておいたけどいい?」麻里が訊いてきた。

「いいよ」

他の二人が言ったので、彩音も頷いた。

ボーリング場に着くと、四人の男性達がカウンターの横に固まって、話をしていた。

「宗太くん」

麻里が気付いてその中の一人に近づいて行き、声をかけた。

「まり」

宗太が、麻里に何やら話していた。

「1ゲーム目は個人戦で、2ゲーム目は男女ペアでやろうって」

麻里が彩音達に伝達に来た。

2レーン使って、じゃんけんで男女二人ずつの四人で2チームに別れた。

1ゲーム目は、男性陣はみんな、それなりにハイスコア、女性陣はみんな二桁止まりだった。

2ゲーム目のペアは、男性陣の名前を下に書いたアミダくじを宗太が作り、女性陣がくじを選んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る