惑星エンターテイメント
白川津 中々
◾️
天体良好公転自転に異常なし。
だが、俺の心は満たされない。
誰やこれ知らん嫌いやわぁ。
頭の中でそんな単語がひたすら流れる。
ニュースを読んでもバラエティを観てもそればかり。つまらない大人になったなと思いつつ、昔からこうだったような気もする。「好きな芸能人は誰ですか」という質問のくだらなさぶりに毎回辟易していたはずだし、国民的アイドルとかいう人間の女も気に入らなかった。流行りとか誰もが好きなはずみたいな暗黙の了解がとにかく受け付けなかったのだ。俺はともかく好きなコンテンツを楽しみたいだけなのになぜ侵食してくるのか、まったく許せない。
しかし、昔はまだ楽しめていた気がする。気に入らないにしろ寛容だった。嫌いな奴とそいつが出といるメディアは切り離されて考えられていたのに、今はそれができない。そいつを映す媒体そのものに忌避感と拒絶反応を持つようになってしまった。こうなると、いずれ国や地球そのものを嫌いになってしまうかもしれない。
そうなったら、俺はどうする。やはり、母星へ帰るのか。あの何もない、娯楽が淘汰された星へ。
……なるほど、こういう事か。
故郷の星で娯楽がなくなった理由が分かった。みんなそうなのだ、気に入らないのだ。俺もこれから、きっとそうなる。あれだけ嫌っていた地元が酷く恋しいのはつまりそういう事だろう。しかし、それでも、エンターテイメントへの未練はある。喜び、怒り、悲しみ、楽しみを刺激する偉大なるショーに、没頭できるパフォーマンスに!
地球の人々よ、どうか俺を見捨てないでくれ。どうか、面白いコンテンツを、素晴らしい企画を思いついてくれ。時間はあまりない。俺の心が死ぬ前に、どうか、どうか……
天体良好公転自転に異常なし。
再び心満ちるまで、後……
惑星エンターテイメント 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます