第23話

そう話しかける俺(私)の足の下には、

さっきのリーダ格の男が、転がっていた。


『チッ・・・弱っちぃ奴。口だけかよ・・・』

俺は足を避けるついでに、そいつの顔を蹴っ飛ばし

意識がない事を確認した。


そして、

台所にいたおばさん達10数名を開放した。


‘“これで・・・俺(私)の役目は・・・果たせた(・・かな)”’

そう思った瞬間、俺と私の意識は途切れた。




・・・




その後、

10時間以上眠り続けた私は、目が覚めた後

圭志様から話を聞いた。


私と闇珠は、あの瞬間に完全に体を手放した。

心のなくなった体は、糸の切れた操り人形のように

その場に崩れ落ちたらしい。


そして、

ちょうど後ろから追いかけて来ていた

圭志様と間崎さんに支えられ、事なきを得た。



あの時、闇珠と私は、怒りに任せて繋がっていた。


おじいさんを、殺された・・・

それが暴走のきっかけとなった。


2人の人格が入り乱れ、

誰が誰だか分からなくなり、お互いの心まで侵食。

その結果、

闇珠は淋香に感化され、淋香は闇珠に感化された。


あの時、私が片付けたのは組の3分の1。

80人を10分で片付けていた。

そして、人質だった人達も開放したそうだ。


私はおばさんたちをどうしたのか、

はっきりと覚えていなかった為、

圭志様から話を聞いてほっとしていた。


けれど、あの時二つの疑問があった。


一つは、いつもなら闇珠しかもたない記憶・・・

男たちをなぎ倒していく記憶が、淋香にも存在していた事。

そして、もう一つは、

圭志様と間崎さんには、2つの声が聞こえていた事だ。


この時の私はまだ幼かった為、

それがどういう事か悩む事もせず、

お互いが同じ思い・目的で繋がり、

闇珠の力を二人で使った・・・そう思うことにした。



けれど、あの騒ぎの後から、淋香は笑わなくなった。

そして

おじいさんの葬儀の後、感情を一切外に出さなくなった。


闇珠と淋香・・・あの暴走から、二人がなくした物。

それは大切な心。

そして淋香と闇珠を支えた、光の存在。


その後、

闇珠は完全に闇に沈み、淋香は感情全てなくした。

楽しい事、嬉しい事・・・

光をなくした私達は、ただそこに居るだけの存在に変わる。


その上、この出来事は

昼と夜で完璧に入れ替わり、淋香と闇珠を存在させる・・・

そんな生活を確立する、きっかけにもなった。




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無翼龍闇Ⅱ ~縁繋編~ 【完】 戎月冷音 @ka1zuk1_re0n

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