2話 デスゲームやるぞ!「邪馬台国の女王は誰ですか?」参加者「俺」

俺の名前は砂糖さとう。佐藤ではなく砂糖。周りからよく間違えられるのでもう一度言おう。

 

 俺の名前は砂糖。デスゲームの運営人だ。


 俺たちが運営しているデスゲームはビジネスで、最後の勝者を視聴者に予測してもらい、当たったものには倍率に応じて金が与えられる。逆に外れたものは掛け金がパーになる。もっとも、視聴者のほとんどは富裕層なので1億ぐらい失ったぐらいでは痛くも痒くもないが。


 「砂糖さん。参加者がそろそろ目覚めます」

 

 細長いちょっと緑色の顔をして話しかけてきたこいつは九里きゅうり。野菜の方の胡瓜ではない。


 このゲームの参加者たちはほとんどが金目的で参加するろくでなし。いなくなったとしても誰も気づかない奴らばかりだ。一応警察と手を組んで行方不明になるようにしてあるが。


 さてさて!今回の参加者はどんな奴らかな〜


 参加者名簿に目を通すと、5人の男性の個人情報があった。


 これはおったまげた。なんとあのM⚫️NSAの会員がいるではないか。IQがどのくらいあるかまでは書かれていないが、東大の医学部に試験を満点で入学しているからにはさぞかし高いことなのだろう。現在は名医として活躍中のようだ。


 銀縁眼鏡をかけたスマートな体型のまなぶは名前も見た目も裏切っていない。どうして

このゲームに参加したのか不思議なくらいだ。


 二人目は無職の平良たいら。ボサボサ仲間に肥満体系からしてさぞかし悲惨な人生を送ってきたのだろう。このゲームにピッタリな犠牲者ではないか。


 三人目は運送業のアルバイトをしている白鹿しらが。この名前をつけた親、ひどいやつだな…俺が言えたことじゃないが。しかも白髪ときた。


 四人目は裏社会で詐欺の受け子をしている玉酢与だますよ。うん。名付け親は何を考えてこんな名前にしたのかな?俺でももっといい名前つけるぞ。


 五人目は無職のいぬい。どこにでもありそうな顔をしている。普段のゲームならなんとも思わなかっただろうが、今回の参加者のクセが強すぎるばかりになんだかかわいそうに見えてきた。


 「玉酢与?何スカこの名前。酷すぎるじゃないすかー」


 お前の名前も大概だけどな、という言葉を飲み込んで俺はゲームを開始した。


 参加者は全員目が覚めており、学を除いて非常に混乱しているみたいだった。


 まずはルール説明から。


 1.逆らえば殺す!


 これはデスゲームの定番ルール。


 2.三つのゲームをして、最も優秀な成績を収めたものには1億円が与えられる。


 これも定番のルール。


 3.途中棄権は認められない


 結局全部定番ルールだけど。


 さてさて、第一ゲームの説明をするとしますか。なんか色々喚いているけど、今は音声をオフにしているから聴こえませーん!


 逆らえば殺すとか言ってるけど、よっぽどひどい行動を取らない限り殺すなと上から命令が来てるからな、お前らの文句なんか聞いてたまるかばーか!


 第一ゲームは単純なクイズ。全七問で、一問正解するたびにプラス一ポイント。逆に間違えるとマイナス二ポイント。なんて単純で優しいルールなんだろうか。


 では、さっそく第一問を始めるとしますか。


 「第一問 邪馬台国の女王は誰か」


 制限時間は1分。目の前のタッチパネルに専用のペンで答えを書き込む。一般が、一人ずつ答えをオープンしていき、間違えたものに絶望を与えていく。


 ふむふむ。平良と白画画悩んでいるようだな。学ぶと乾はすぐさま答えを書き込んだというのに。こんなの小学生レベルだろ。


「1分が過ぎました。解答をやめてください」


 ここで音声をオンにする。奴らの声をしっかりと聞くためだ。特に最初にオープンされて一人だけ間違えたやつの絶叫ときたら!


 ―学の解答―

 (卑弥呼)


 まぁ正解だよな。一問目はサービス問題だし。彼の本領が発揮されるのは少し後になりそうだ。


 よほどつまらなかったのだろう。学は椅子にもたれてうとうととしている。眠ったら、電流で起こすぞーw


 ―平良の解答―

 (俺)

 

 ん?


 見間違えたのかな?


 え、俺?

 

 マジで言ってんのかこいつ。


 「おい、どういうことだ運営!邪馬台国の女王はこの俺様だぞ!?」


 マジで言ってたわこいつ。嘘だろまじかよおい。


 いつの時代の国だと思ってんだよお前は不老不死か何かか!?そもそもお前は男だろ男!卑弥呼は女王なんだよ女王!男が女王になれるわけねーだろー!!


 「聞いているのか運営!おい!クソやろう!正解だろうが!」


 ダメだわこいつ。とりあえず電流で気絶さしとこ。


 「おい!正解にしろ!正解に…ママアアアアア!!」


 よし、これでいい。これで他の奴らも下手に手出しはできまい。


 つーかママアアアアアアってマザコンだったんだなこいつ…。


 「さ、さあ次だ次!白画!」


 突然の大声に驚いたのか、白画は短い悲鳴をあげてひっくり返ったが、すぐさま体制を整えた。


 「ぼ、僕ですか。いいでしょう。僕の天才的な頭脳をご覧あれ!」


 随分と自信があるんだなコイツ。この問題に正解しても誇れねぇけど。


 ―白画の解答―

 (ひれつなみこ)


 漢字を書けなかったのかコイツ。卑怯な巫女って…なんか惜しいな。全くずれているんだけど。


 「馬鹿な!?この僕が間違えるなんて!?なんて難しい問題なんだ!?」


 ヒステリックに白画が叫ぶ。


 いや、白髪のおっさん。それぐらい小学生でも解けますよ。


 全く、今回はろくな参加者がいないな。残りもこんな奴らばっかじゃないよな?


 次はえーと、あ、玉酢与だ。名前からしてヤバそうなやつだけど、一体どんな解答をしたんだ?


 ―玉酢与の解答―

 (卑弥呼は、『魏志倭人伝』等の古代中国の史書に記されている「倭国の女王」と称された人物。魏志倭人伝によると、倭人の国は多くの男王が統治していた小国に分かれていたが、2世紀後半に小国同士が抗争したために倭人の国は大いに乱れた。そのため、卑弥呼を擁立した連合国家的組織をつくり安定した)

 

 はいー?


 なんだこの教科書の説明文みたいな解答は。どっかで見たことのある文面だな。ツーか、こんななげー文章を1分でどうやって書いたんだよ。お前は速書きのプロか。あってるけどよ。


 「砂糖さん、この解答⚫️oogleで調べたらすぐ出てきましたよ」


 「マジで!?」


 九里の言う通りだった。一語一句、完璧に一致している。


 玉酢与…完全記憶能力でも持っているのか。


 想像を超えた解答だわこれは。他の奴らも同じぐらいやばいけど。

 

 まともなのは学だけじゃねーか。


 最後は乾。頼むからまともな答えであってくれよ。


 ―乾の解答―

 

 (邪馬台国という国が存在していると言うのは歴史的な書物に書かれていますが、それらは全て「ナユラハタマラ」の世界を欺き征服するための捏造であるため、この問題は成立していない)


 「九里」


 「なんですか砂糖さん」


 「コイツら全員解放してやれ。一人二千万円渡して」


 「奇遇ですね。俺も同じことを考えていたっス」



 俺の名前は砂糖。デスゲームの運営人だ。ただ、進行役ではなくゲームの内容を考えるポジションに今はついている。


 この日俺が学んだことはただ一つ。


 

 世の中やべー奴らがいっぱいいるってことだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

5分後にお馬鹿な結末 八咫烏 瞻擧 @11010417

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画