第2話 哨戒所

「嬢ちゃん、見慣れない顔だな。この辺りの者じゃなさそうだが、何の用だ?」


 ズドン!


『'Come and Get Your Love' - Redboneを再生』


 ラフィの答えはショットガンの一撃だった。彼女は冷たい表情を浮かべ、警備兵に向けて引き金を引き、その轟音が夜の静けさを打ち破った。警備兵は驚く暇もなく地面に倒れた。彼女を動かしているのは復讐の念だけで、ラフィに迷いは一切なかった。


『戦闘モードに適応中。進行をサポートします、ラフィ。』


 AI『MUSE』の冷静な声がヘッドホンから響き、陽気なリズムとメロディが彼女の耳を満たす。『MUSE』が淡々と状況を報告する。


『敵兵の数、推定12名。3名がこちらに接近中。2名が施設内部、残りは各自の配置についているようです。警戒レベルが上がっています。』


 ラフィは警報が鳴り響く哨戒所の中へと迷わず足を踏み入れ、MUSEの情報を瞬時に把握した。


「了解。」


 彼女の手には父の形見のソードオフショットガンが握られている。その銃口は敵の気配を鋭敏に捉えていた。


 傭兵たちは突然の襲撃に驚き、慌ただしく動き出した。ラフィは混乱する敵を前にしても冷静に周囲を見渡し、施設の中へ進んでいった。MUSEは敵の位置を次々に報告し、ラフィを導いている。


『敵兵が施設入り口から出てきます。撃ち合いは避けられません。接触まで3、2、1』


 次の瞬間、ラフィは正面に現れた敵兵に向けてショットガンを撃った。


 ズドン!


 ショットガンの音が響き、一人の傭兵が吹き飛ばされた。その瞬間、他の傭兵たちはすぐに身を隠し、反撃の体勢に入る。ラフィは腰に装備していたフラッシュバンを投げ込み、敵の視界を奪って距離を詰めた。彼女は目が眩んで動きが鈍くなった二人の傭兵に向けて正確にショットガンを二発撃ち、仕留めた。


「MUSE、通信室はどこ?」


『そこを曲がって階段を登った先にあります。』


「ありがとう。」


 ラフィは周囲に警戒しながら通信室へ続く階段を駆け上がった。


『通信室には武装した傭兵が二人います。』


 その報告を聞くと、ラフィはすぐにフラッシュバンを取り出し、通信室内に投げ入れた。


「なっ! フラッ—!」


 室内の傭兵は扉に向かって慌てて発砲したが、ラフィは落ち着いていた。彼女は敵が弾を撃ち切るのを待ってから突入し、ためらうことなく敵を倒した。


 ラフィはすぐに通信室のコントロールパネルにMUSEを接続した。MUSEは必要な情報を収集し、データを端末にダウンロードした。


『情報の収集完了。残りの敵兵がこちらに向かっています。脱出を推奨します。』


「ただ逃げるだけじゃ面白くないわ、武器庫はどこ?」


『武器庫はこの建物を出て右側にあります。』


「分かったわ。」


 ラフィは通信室の窓を割り、外に飛び降りた。地面に着地すると、軽く周囲を見渡し、敵の動きを注意深く監視した。夜風が彼女の髪をなびかせ、暗闇の中でもその瞳には強い光が宿っていた。


『一体何をするつもりですか。』


「このままは地味でしょ。どうせなら派手にやりましょう。」


 彼女は素早く武器庫に向かい、ロックを撃って壊した。扉を開けると、内部にはさまざまな火器と弾薬が積み上げられていた。ラフィは爆薬を探し始め、しばらくすると目当てのものを見つけた。


「これね、ちょうどいいのがあるわ。さあ、これで用事も済んだからここをおさらばしましょう。MUSE、爆薬の起爆準備をして。」


『了解しました。爆薬を登録、これより爆破シーケンスを開始します。』


 起爆準備を終えた後、ラフィは脱出を開始した。彼女は素早く姿勢を低くし、遮蔽物に隠れながらショットガンを撃ち、再び隠れる。その繰り返しで敵の動きを抑え込んでいった。暗闇の中、彼女の動きは静かで鋭く、一瞬の隙も見せない。


「MUSE、残りの敵は?」


『追跡中の敵兵は3名。中央施設付近から接近中です。』


「分かった。こっちに来るなら、全員まとめて片付けてあげるわ。」


 ラフィは素早く位置を変え、遮蔽物の陰に身を潜めた。追跡してくる敵兵の足音が次第に近づいてくる。彼女は息を潜め、敵兵が視界に入るのを待った。


『接近中、3、2、1』


 ラフィは一気に飛び出し、ショットガンを構えて一撃を放った。轟音とともに一人の敵兵が崩れ落ちた。続けて二人目に向けて素早く反撃、さらに三人目が逃げる間もなく彼女は正確に引き金を引いた。


「MUSE、周囲の安全確認を。」


『確認完了。安全圏に到達しました。爆破を実行可能です。』


 ラフィは笑みを浮かべながら、静かにスイッチを押した。彼女の目には強い決意が宿っていた。


「バーン!」


 轟音とともに哨戒所が火の海となった。武器庫内の爆薬が次々に炸裂し、哨戒所の建物が激しく燃え上がった。巨大な火柱が立ち上り、夜空を赤く染めた。その光景を見届けながら、ラフィは無言でその場を離れた。


 復讐の狼煙が今、上がり始めた。

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ショットガンガール @kan-pan

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