第24話
できるだけ茉莉に見付からないよう注意していたつもりだったが、彼女はロビーにしっかりと陣取っていた。置いていくのは許しませんよといわんばかりの態度に、やっぱり女難の相が出ているに違いないと内心でそっと涙を流す。
「どうしても、着いてくるおつもりですか?」
「ここまで来た以上、絶対に私も彼を見つけます。お願いです、危ないことはしませんから、どうか連れて行ってください」
危ないことをしないというなら、大人しく宿に――いや、名古屋に帰ってほしいと思うのだが、美女に見つめられて懇願されると、断れない男の哀しい性。
「判りました。そこまでおっしゃるならば同行しても構いませんが、これだけは約束してください」
できるだけ茉莉の矜持を傷つけぬよう、言葉を選ぶ。
できるだけ茉莉に見付からないよう注意していたつもりだったが、彼女はロビーにしっかりと陣取っていた。置いていくのは許しませんよといわんばかりの態度に、やっぱり女難の相が出ているに違いないと、馨は内心でそっと涙を流す。
「どうしても、着いてくるおつもりですか?」
「ここまで来た以上、絶対に私も彼を見つけます。お願いです、危ないことはしませんから、どうか連れて行ってください」
危ないことをしないというなら、大人しく宿に――いや、名古屋に帰ってほしいと思うのだが、美女に見つめられて懇願されると、断れない男の哀しい性。
「判りました。そこまでおっしゃるならば同行しても構いませんが、これだけは約束してください」
できるだけ茉莉の矜持を傷つけぬよう、言葉を選ぶ。
母が初仕事の時に女だからと侮られたように、自分は若いからという理由で信頼されないかもしれない。とにかく依頼人を好き勝手にさせないことだ。はったりでも何でもきかせてやろうじゃないかと、気合いを入れる。
「絶対に僕の言うことには従ってください。そうでなければ、冗談抜きで命の保証は出来ませんよ」
真剣な眼差しと声で伝えると、彼女も神妙な面持ちで頷いてくれた。
「この蘇芳を護衛として付けます。彼女が結界を張りますから、余程のことがない限りは安全だと思ってください。では行きましょうか。できるだけ午前中に、けりをつけましょう」
宿を出て、そのままタクシーで
(これは想像以上に、強い霊力だな)
写真を霊視したときとは、比べものにならぬほどの圧迫感がある。空気が刃となって襲いかかってきているようだ。霊感のない人間を、羨ましく思う瞬間でもあった。
「
命令を下すと、それぞれの式神たちは迅速に動いた。車全体に結界を張り、
「な、なんだか寒くありませんか?」
「おかしいな。エアコン、故障したのかな?」
タクシーの運転手も寒気を感じたのか、首を捻りながらエアコンを操作しようと手を伸ばす。しかし作動すらしていないことを確認した運転手は、おかしいなぁと呟きながら運転に集中する。エアコンが作動していないことを確認した茉莉は、寒さと不気味さで粟立つ両腕を抱え込んだ。彼女には見えないが、式神たちの顔は緊張で強張っている。普段は不気味なほどに無表情なのだが、こうも緊張する彼らを、使役する立場の馨ですら初めて見る。
「臨兵闘者皆陣列在前」
前後に車がないこと、また車道が真っ直ぐで見通しが良いことを確認してから、馨は素早く
退魔師・久遠馨の心霊事件簿 三田村優希 @mitamurayuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。退魔師・久遠馨の心霊事件簿の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます