薬やめますか?それとも人間やめますか?

Karura

第1話塹壕とは溝である

 火、交換、権力、鉄、火薬、核、そして……薬

 技術開発には争いがつきものだ。それは企業同士の争いでもあるが。時にそれは国単位で争う事もある。

 もしあの時人類が火を見つけなければまず「ヒト」と呼ばれる種族ができなかったかもしれない。

 もし物々交換が起こらず。貧富の差が生まれなかったら権力……国と言う単位はできなかったかもしれない。

 もしベルトルトやノーベルが火薬を……いや、こんなタラレバな考えはやめよう。

 ただこんなことでも考えていないと落ち着かないものだ。「塹壕の中」と言う物は。


※※※

topics 塹壕

 戦争において、銃弾などから身を守るために掘る溝。それが墓場になるか壁になるかは誰にもわからない。

※※※


 この北方にある最前線の塹壕に配置されて二か月、もう季節は夏が終わるころになっていた。前線を押し上げるためと説明されてここに来たが、一向に出撃命令は出てこなかった。


「今日もここか……」

「そう落ち込むなよブロ。俺がいるだろ?」

「おめぇがいるからだよ」


 最初の頃は塹壕での生活になれなかったが、今では隣人と無駄話ができるぐらいにはなれた。名前は確か……ユリウスだったけか。もう頭がイカれてるのか。やけにハイテンションなヤツだ。


「あ~今日もこりゃ雨だな。また一段と冷えるぞぉ~」

「またか」

「仕方ねぇぜブロ。ここは沼地ができるくらいの湿地帯だぜ?まだ塹壕が水没しないだけましさ」


 今日も冷雨が降る。そのことを考えるだけで憂鬱だった。服が濡れて寒いのはもちろん。雨が降れば、当然水は高い位置から低い位置に流れるので、この塹壕にたまっていく。そして自分たちの靴、靴下にしみていく。この感覚が最高に気持ち悪いのだ。


「今日もどうせ敵兵なんてこねぇのにな~」

「来たらどうする?」

「来てもどうせ歩兵だろ?」

「もしもの話だ。もし戦車が来たら?」

「まぁ~どうせ目の前の森を突破するのに準備が必要だから、偵察が気づいて上官がなんか命令を……この話、前にもしなかったか?」

「もう故郷の話も出し尽くしたし、ネタがないんだよ」

「お前の故郷……確か海辺にある……」

「クルチャリオだ」

「そうだ、そうだ。クルチャリオだ。その話をしようぜ!」

「わかった。お前に話してなかった話なんてあったけな……」

「まだあるだろ?なにs……」

「何を喋っているんだ?」


 上官に見つかってしまった。こうなると面倒くさい。


「いくらここに敵兵が来る可能性が低いからと言って油断していい訳はない」

 

 ここの塹壕は最前線と言っても映画のように常に戦ったりしていて忙しいわけではない。むしろ暇だったりする。なぜなら、ここ「レグロウス軍」の塹壕と敵国「ケセライ軍」の塹壕の間には森と沼地があり。どちらも攻めあぐねているらしい。まぁ順当にいけば、俺達歩兵による攻撃かヴァルキュリアが導ny……


「ホープ」

「はっはい!」


 思考にふけっているときに、急に呼ばれてつい上ずった声を上げてしまう。


「近いうちに、ヴァルキュリアが到着する。お前が心待ちにしていた進軍だ。覚悟しておくんだな。それとユリウス!」

「はっはい!」


 おめぇもかよ……


「くれぐれもこの件は内密にな。もちろんホープもだ。それでは失礼する」


 そう言って上官は去っていく。数歩歩いた後、またこちらにくるりと振り返ると


「次、また無駄話をしたら、爆弾巻きつけて特攻させるぞ?」


 そう言って、奥へと進んでいった。


「……」

「……」

「なぁホープお前、ヴァルキュリアって、見たことあるか?」

「お前さっき、上官にしゃべるなって言われたばっかだよな」


※※※

topics 覚醒剤

 文字通り覚醒させるお薬。使うと人の理を外れた、身体能力、再生能力を得る。ただし、幻覚、幻聴作用、中毒性などから一般兵に渡されていない代物。

※※※


 今日も一日が終わる。交代の人と入れ替わりで、休憩室……休憩場所へとも戻る。置いてある、毛布を広げそれにくるまる。北方の夜は寒い、それに今日なんて雨が降った。交代の人はどう寝ていたのだろうか……いや寝たのではなく倒れたのだろうか?……また無駄なことを考えてるな。さっさとねy……


「おぉい!誰か!俺の話を聞いてくれよ!」

「また抱いた娼婦の話だろう?もう何度も聞き飽きたって」

「なんだぁユリウス?俺の話はつまらないってか?」

「明日も早いんだから寝r……酒臭ッ!おめぇ酒何てどっから手に入れたんだよ!?」

「ん?上官の部屋にあったものを借りたんだよ」

「よくアレが許したなぁ」

「ん?許可なんて取ってないぞ?」

「おい!」


 目を閉じて寝ようすると、ユリウスと誰かが言い合ってるの聞こえた。


「もういいや。おめぇはばれない内にそれをどっかに隠して寝ろ!」

「なぁ……ユリウス」

「どうした?」

「明日、ヴァルキュリアが来るらしいぞ」

「は!?」

「進軍か……どっちに回されるかわからないけど、こえーな」


 あの上官、言うタイミング急すぎだろ……まぁ確かにこのタイミングだったら暴露されてもあまり支障はないだろうけど。


「「こえーな」じゃねーよ。何、寝る前に爆弾発言してくれてんだよ……んでこれが話か。そうじゃなくてももう酒を隠して寝てくれ」


 正直、会話に参加していない俺でももう寝れそうにはないが、寝なければ明日に響く。盗み聞くのもくだらないことを考えるのもいい加減やめにしよう。ヴァルキュリアが来てもどうせ明日も暇なのだから。


「いや。話足りねーな」

「黙れ酔っ払いおめぇのせいで俺はもう寝れそうにねぇよ」

「なぁユリウス」

「なんだよ。俺は意地でも寝るぞ。だから話しかけt……」

「発狂したヴァルキュリアをしってるか?」


※※※

topics 休憩……室?

 兵士たちが休憩をとる部屋?場所?実情はただ屋根があるだけの溝である。当然寒さに対して特に対策を取ってないので、寒い。兵士はこの場所で凍えながら寝るしかないのである。

※※※


あとがき


ここまで読んでくれてありがとうございます!

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PS

 topicsについてですが、読み飛ばし可です。特に重要なことは語ってませんし、考察勢くらいしか読む価値がないです(そんなファンはいない)


 

 







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