第2章②

 しばらく歩いているうちに夕方になった。空はオレンジ色に染まり暗くなってきた。一日中散策してみたが一切手掛かりはみつからなかった。ベンゼンに戻る手がかりどころかここがなんで町なのかすらもわからないままだった。

 長時間歩き続けてケイは疲労が溜まってきていた。

 グーー…

「…お腹すいた…。」

 ここにきてからまだ何も食べていない。食べ物を買おうとしてもケイの住むフォトニアのお金は使えないようだ。何も食べれず、日ももう落ちかけている状況でケイは途方に暮れた。最初にいた市街地からずいぶん人気のない小さな住宅街までやってきた。ケイはそこで遊具が少しある小さな公園にたどり着いた。そこにはベンチもあり、ケイはそこでとりあえず朝が来るのを待って明日に備えることにした。ベンチに横になり静かに目を閉じた。



「はぁ〜残業疲れた〜。ほんと部長ったら私のことこき使うんだから…」

 一人の女性が公園の近くを歩いてる。女性は残業の愚痴をこぼしながらダラダラと公園内に入ってきた。すると女性はベンチのところに誰かがいることに気づいた。女性はベンチに近づいて思わずこう呟いた。

「すごい格好、この衣装とかめっちゃ手が込んでる。レイヤーさんかな?」

ケイはこっちの人からしたらとても奇抜な格好をしている。二次元的な服装に女性はコスプレイヤーさんなのかと思った。女性は横たわってるケイの様子をしばらく伺い、声をかけてみた。

「あのー、大丈夫ですか?」

女性が声をかけるとケイはゆっくり目を覚まして寝ぼけた声で返事をした。ケイの返事を聞いて女性はケイにすかさず、

「どうしたんですか?こんなところで」

と聞いた。ケイはここで一晩過ごそうとしていることを話した。すると女性はとても驚いた様子だった。それもそのはず、今は二月だ。こんな外で一晩過ごしたら風邪をひくに違いない。咄嗟にケイに今に二月であると伝えるとケイも驚いて、

「今って六月じゃないのか?」

とこたえた。女性は少し呆れた様子で今は二月であると伝えた。ケイも女性の訴えで「通りで少し寒いのか」と納得した。

「ところでお前さん、一体ここはどこなんだ?なんか気づいたら知らないところにいたんだよね〜」

 ケイはそう女性に話し出した。ケイの話を聞き女性はここが東京であると答えた。しかし、ケイは東京という地名を聞いたことがなかった。女性はすかさず日本の東京だと言った。だがケイは日本も聞いたことがない様子だった。日本も東京も知らないケイに女性はまた一つ質問をした。

「じゃあ逆にあなたはどこからきたんですか?」

女性がそう言うとケイは自慢げに

「そりゃあ、フォトニアってとこから来た。」

と、答えた。女性は聞いたことのない地名だったから困惑した。それもそのはず、日本の東京に住むこの女性からしたらフォトニアは日本…いや地球上でそんな地名の場所は存在しないからである。女性は一連の流れ、話が絶妙に噛み合わない感じからある一つの仮説を思いついた。

「もしかしてあれじゃないですか?異世界転生。」

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