第20話 最終話 奇跡

上から二人を眺めていた

その男は、杉山という天使だ。



杉山は天使だけど、特殊な天使で…



死に関わる願いを叶える代わりに…

その人の大切なものを奪う…

そして、それを神に伝えるという役目だ。



舞の時には、初恋は実らないという大切なものを奪った。

はずだった……





時は、空と舞が中学の時にさかのぼる…





   *****





空は、中学の入学式の日…

教室で、緊張して座っている舞を見つけた…

あまりに緊張してる姿が面白くて…

それで、話し掛けたんだ。



最初は、何とも思ってなかったけど…

話をしているうちに、舞の笑顔が可愛いなって思うようになった…

それで、時々話し掛けていたんだ…

体育祭で二人三脚をやった時は、すごく楽しかったし…

舞は、可愛かった…



でも、中2になってクラスが別になってしまった…



でも、クラブではいつも舞を目で追っていた…

たまに目が合うと…恥ずかしかったから…

何でもないような顔をして笑いかけた。

でも、気になるから…

自分から話し掛けたりもした…



俺は、いつの間にか…

舞の事を好きになっていた。

舞と目が合うと…胸がドキドキする。



舞とは、ちょくちょく目が合う…

もしかしたら、舞も俺のことを好きなのかな?



こんなに、女の子のことが気になることは

今までなかった…

本当に不思議だった。



いつか、想いを伝えたい…

中3になって、もし…また同じクラスになったら

告白しようかな…

そう思っていた…







ある日の夜…



起こされて目を開けると…

そこに杉山がいた。



驚いた、空だったけど…

寝ぼけながら話を聞いていると…



「舞さんは明日、交通事故に合います。助けたいですか?」



って、いきなり言われた…

俺は、とっさに…



「それが本当なら…助けたいです」



と言っていた…



「でも、あなたは舞さんを好きだということを忘れてしまいます。それでもいいですか?」


「助けられるなら、それでもいいです」


「分かりました。では願いを聞きます」


「でも……俺は絶対にいつか舞を好きな気持ちを思い出す…奇跡をおこしてみせます。この願いも追加してください」


「叶えられるかは、分かりません。それでもいいですか?」


「舞の命を助けられるなら…それでいいです。俺は、絶対に奇跡をおこす……」



それを聞いてから、杉山は消えた…





翌日…目を覚ました空は

昨日、男の人と話をした夢を見たような気がしたけど…

何を話したか覚えていないし…

たいした夢じゃないと思った…





舞は、学校の帰りに大きなトラックに引かれそうになったけど…

危機一髪のところで、トラックは舞をよけて…

ケガひとつしなかった。



実は、舞の所に行くより前に

杉山は、空のところに行っていたのだ…



杉山は、空の言葉をそのままを神に伝えた。



「分かった…」



と神は、言った…



その後、舞の所に行くことになった杉山は

舞とのやり取りも、そのまま神に伝えた…





神が、なぜ願いを聞いたのかは分からない…

でも、神は2人を再会させただけだ。

舞への想いを忘れていた空が、自分の力で思い出した…



空くんは、僕のことなんて覚えていないだろうけど…

本当に奇跡を起こしたんだね…





きっと、2人の想いが強かったから…

2人はまた、想い合うことが出来たのかもしれない…

それは、奇跡だったのか必然だったのかは

分からないけど…





2人が今、幸せだというのは事実…





これが、杉山が知っているすべてだ…

2人は、このことを知らない…





これからも、2人が幸せでありますように…


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実らなかった初恋の…奇跡 秋風爽籟 @sourai-a

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