第19話 明るい未来

空と栞が子どもを諦めてから、1年が経った…



2人は報道で、不妊治療の保険適用が始まったと知った。

2人は顔を見合わせて…



「これって…前より費用は少なくて治療が出来るってことじゃない?」


「そういうことだよね?」


「また挑戦できるかも?」


「でも、舞は負担じゃない?」


「私は、全然大丈夫だよ…空は?」


「俺も、全然大丈夫!」



そして、再び治療に通うことにした。



それから、スケジュールに従って治療をしていく。



一度は諦めた子どもだった。

仕事を休まなければいけなかったり、周りにも迷惑をかけることもある。

それでも…本当は子どもが欲しかった。



人工授精を3回行ったけど妊娠に至らなかった…

その度に、舞は落ち込んだ…

俺も、正直色々な面でしんどさを感じていた。



その後、国からの助成も行われるようになって…

更に負担も少なくなった。



そして、人工授精5回目にして…

やっと、妊娠に成功した。

舞は、泣いて喜んだ…

空の両親も、諦めていたらしく…

喜んでくれた。

舞の両親も喜んだけど、特にお義母さんが泣いて喜んだそうだ…



あとは、この子が無事に育って生まれて来てくれるかだ…



安定期も過ぎ…

舞の顔も、どんどん穏やかになっていった。



お腹の子どもが動いたと喜ぶ舞の顔を見ると…

俺も幸せだった。

舞のお腹に手を当てると…

本当に動いている。



俺たちの子が、ここにいる。

毎日、目が覚める度に夢ではないかと思って…

でも、起きると…

大きなお腹をした舞がいる。

その度、俺は幸せだと実感した。



そして、予定日を2日過ぎた日…



陣痛が始まった…

俺は、心配で仕事を休んだ…



「今日生まれるかも分からないのに…」



って、舞は笑っていたけど…



誕生する瞬間に、傍にいられなくても病院にはいたかった。



舞のお義母さんに家に来てもらった。



陣痛の時間が、どんどん短くなる。



お義母さんが時間を計って…



「空くん、そろそろ病院に電話して、病院に行こう」



俺は、慌てて病院に電話をして…

車を走らせた。



最初は、病室にいたけど…

更に、陣痛の時間が短くなったから



分娩室に移動した。



お義母さんが、舞と一緒に分娩室に入った…



俺は、外で待っていた。



母さんに、舞が分娩室に入ったと連絡したら

飛んで来た…

2人で、待合室で待った…



「母さん、舞は大丈夫かな?」


「先生がいるから大丈夫だよ」



そして、数時間後…



子どもの泣き声が聞こえた…



「生まれた…」



子どもは、女の子だった。



初めて、その子を見た時…

俺は気が付くと…泣いていた。





   *****





舞は、子どもの顔を見られて…

そして、泣いている空を見て…

本当に幸せだと思った…



これまで、色々あった…



初恋を諦めて…

でも、空と再会できた。

そして、想いが通じて…

結婚することもできた。



でも、人生はそんなにうまくいかなくて…

子どもができない苦しみを与えられた…



でも、それを乗り越えて…

私たちは、ここにいる。



私の初恋は、実らなかったはずだった…

神様…それなのに、実らせて下さって本当にありがとうございます。



どうして実ったのか気にはなるけど…



あれは、やっぱり夢だったのかもしれない。



こうして、空と子どもと生きていける現実がある。

初めての子育ては、大変だったけど…

楽しいこともいっぱいだった…





それから、2人は話し合い…

治療を続け…

2年後に、2人目の子どもを授かった…

そして、男の子が生まれた…





2人はさらに幸せに包まれていた…







これが、空と舞の物語だ…







でも、それを上から眺めて微笑んでいる男がいた…

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