LastPhase◆Phase.010『 慶歌に贈る科学の黎明 』

 

 

 

 三ヶ月後――。

 

 

― LastPhase ― Phase.010『 慶歌けいかに贈る科学の黎明れいめい 』―

 

 

「や、やった!! 皆!! ついに!! ついにできた!!」

 春摩しゅんまは、研究室に集う仲間達を見回し、興奮した様子で言った。

 そんな春摩の両手は、水をすくうかのように合わせられ、その両てのひらの上には小さな天色あまいろの龍を乗せている。

「成功だ!!」

 春摩がそのまま両手を掲げるようにすると、仲間達は歓声をあげて喜んだ。

 その中、再び胸元まで両手を戻すと、春摩は小さな龍に言った。

「待たせて悪かったね。慶歌。まずは短時間から試していく形にはなるけど、強化した迷彩機能も好きな時に使えるし、安全性も過去最高だ。――だから、僕らと一緒なら、これからは慶歌が出たい時にこっちの世界に出られるよ!」

 慶歌は、春摩の言葉に嬉しそうに鳴く。

「ありがとう。灯里とうり。――またこちらの世界に出られて、慶歌は嬉しい」

 そんな慶歌に、春摩は微笑む。

「僕も本当に嬉しいよ。慶歌。――これからは慶歌も、データを通してじゃなく、実際に見て、聴いて、感じて、色々な事を学んでいこう」

「うむ」

 春摩の言葉に、慶歌はまたひとつ嬉しそうに頷いた。

 春摩もそれに頷き返して嬉しそうにしたが、すぐにはっとした様子で言った。

「そ、そうだ。それじゃあ早速、天宮城うぶしろ隊長にもご報告に行こう! あの方もずっと、この時を楽しみにしていてくれたから!」

「そうだな」

 慶歌が言うと、春摩は頷き返し、続けて仲間達に言った。

「そ、それじゃあ、皆! ちょっと行ってくるね!」

 仲間達は、そんな春摩に笑顔を向け、

「おう。行ってらっしゃい。我らがラボ長~」

「途中でこけんなよ~」

 と、口々に言った。

 春摩はそれに、

「わ、わかってる!」

 と応じつつ、

「えっと、デバイスは――」

 と、自身の軍用デバイスを探した。

 すると、その探し物はすぐに春摩の眼前に現れた。

「あ……」

 犬尾いぬおが、春摩の軍用デバイスを差し出していた。

 犬尾は、少し頬を赤らめながら春摩に言う。

「と、特に、階段は、お気をつけて!」

 春摩は、そんな犬尾に赤みの裾分けを貰いながら、デバイスを優しく受け取った。

「あ、あはは。うん……。気をつけるよ。――ありがとう」

 すると、犬尾は嬉しそうに笑った。

「は、はい! えっと……、行ってらっしゃい!」

 そんな犬尾に、春摩も笑い返す。

「うん。行ってきます……!」

 その後、仲間達と恋人に見送られた春摩は、右肩に天色の龍を乗せ、慌ただしく研究室を出て行った。

 そうして、春摩と研究所の仲間達が異能隊の一員となり、幾つもの新たな夜明け越えたその日。

 優秀な科学者達は新たな成果を挙げ、異能隊総隊長を大いに喜ばせた。

 そんな彼らは、異能隊の仲間達と共に、その後も幾つもの夜明けを越えていった。

 

 

 

 あらゆる精鋭集う、その異能部隊の名は〈DownConecterドーン・コネクター〉。

 彼らは今この瞬間も、世のすべての者達を、次の夜明けへと導き続けている――。

 

 

 

 

 

Fin.

 

🍵Thank you for your time...🍵

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