エピローグ
第28話
「なんだこれは…」
満月はその日、数日間連絡が途絶えていた事務所の事務員の家を訪れていた。
玄関を開けると、床は一面びっしりと色鮮やかな花々に覆われ、リビングへと進むとただ一つ残ったベッドの上に一人の女が眠っていた。
「…………………」
「満月、なにか分かったか?」
暗緑の問に、満月は花に埋もれるようにして眠っている女を見下ろしながらため息をついた。
「これはアイツの夢だ。この女はもう夢から抜け出せない」
「アイツって誰だ?知ってるのか?」
「ああ、知ってる。黒百合を連れて来なくて良かったな、足元を見てみろ、呪いが仕掛けてある。黒百合はこの女になにかしたのか?」
満月の声掛けに暗緑が足元を見ると、一見花で分からなくなっているがそこには特定の条件を持った対象を襲う呪詛が仕掛けられていた。
「いや…黒百合がというより…。かすみ…この女性の方が黒百合に好意を抱いていたようだった」
暗緑の返答に満月は納得したように頷く。
「なるほど。まあ、人間なんだそれも自然か。後は杏に任せるぞ、角が立たないのはアイツくらいだ」
そう言って満月が身を翻し、再び玄関へと戻ろうとした時、一瞬だけ女の首筋に二つの噛み跡のようなものを見た。
「……………」
「満月?どうした、杏様にお願いしにあがるのなら、はやくしないとスケジュールが」
「分かってる…、…………そうか」
自分を急かす暗緑を片手で制し、満月は金色の瞳を輝かせて傲慢な笑みを浮かべた。
「"まだ"居たんだな、吸血鬼」
☆おわり☆
君の悪夢も君の恋も全部僕が食べてあげる。 椿 @Tubaki_0902
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます