第19話
「世間話……?」
(ひぃ…!)
ギロリと鋭い視線が自分の背中を刺さるのを感じ、朱殷はいたたまれず、意味の無い画面に、意味の無い文字列を入力し始める。
カチャカチャとキーボードを無意味にたたく朱殷に、牡丹はコーヒーの入ったマグカップに口をつけ、再び溜息をついた。
「………恋の様子がおかしかった、朱殷お前、何かしたか?」
牡丹の言葉に朱殷はビクリと肩を跳ねさせたが、あくまでも平静を装おうと、「わ、私があ?いいえ〜?なにもお?」と牡丹を振り返らず返したが、
やはり不自然に声が大きくなり、それでいて震えていた為、牡丹が気が付かないはずがなかった。
「そうか……まぁ、なにを話したかは知らないし、そこまで追求するつもりも無いが…気を付けろよ」
「あ、はい…すいません…」
この時、朱殷は業務中の私語について指摘されたのだと思い、謝ったが、牡丹の言葉の本当の意味を知ったのは、朱殷が人間ではなくなってしまった時だった。
目覚めたらぬいぐるみになっていました。〜恋〜 椿 @Tubaki_0902
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