チビが天下をとる話!

ざくざくたぬき

第1話 喋るハムスター?!?!

「あー緊張するぅ!」


今日は入学式。

月野あかりが学校を目の前にして行くのをためらっている。

きちんと着ている制服とは真逆に、ツインテールが大暴れしている。

季節は春。

桜が舞い散る街を暖かい日差しが包み込む。


「あかり、いってらっしゃい」


「はい、行ってきます…」


お母さんに流されるがままにシューンとした表情で学校に入っていく。

その様子をあかりの両親が手を降って見送っている。


学校は至って普通の見た目だ。

校門があって玄関まで道が続いており、すぐ右にはグラウンドがある。


「えーっと、私の教室は…」


あかりが案内図を見て悩んでいると、後ろから声をかけられた。


「君、大丈夫?」


振り返ると黒髪ショートが似合う、いかにもな感じのイケメンが立っていた。


「教室どこ?」


「あ、え?あぁ!えぇと、1-1だよ」


あかりは見惚れていたため返事が少し遅れてしまった。


「俺もだよ!一緒に行こう」


そう言ってイケメンはあかりの手を引いて一緒に教室まで行った。










「ここだよ。俺、早乙女拓人。君は?」


「私、月野あかり。よろしくね、早乙女さん。」


「よろしく、月野さん。」


あかりは有頂天だった。

入学当日にイケメンと話すなんて!私の運命の人ってもしかして…早乙女くん!?

なんて妄想をするまでに心が浮いていた。

ふわふわ頭のまま席に着き、入学式の放送が鳴るまで待っていた。

クラスの人たちはもう楽しそうに喋っている。

まるで友達のように。

あかりも誰かに声をかけようとしたその時、眼鏡をかけた男性の先生が入ってきてみんなを静かにさせたあと、体育館に集まるように言った。




体育館に並んで、入学式が始まる。

「緊張するよ〜っ」なんて言えるはずもなく、静かに黙っていろんな人の話を聞いた。











クラスに戻ると担任の先生が立っていた。

30代前半くらいのショートカットの女性だ。


「前田みかこと言います。皆さんといい1年が過ごせるように願っています。よろしくお願いしますね」


すると先生が黒板に文字を書き始めた。

書き終えると先生がくるりとこちらを向いて、パンッと手を合わせた。


「それではみなさん。自己紹介していきましょう。名前と好きなもの、趣味でもいいですよ。あと一つは、自分で何か好きなこと言ってくださいね。」


そう言われ、名簿番号順に1人1人自己紹介していった。


「早乙女拓人です。好きなものはバスケで、そうですね…仲良くして下さい」


早乙女くんはバスケが好きだということはイメージ通り過ぎてあかりは驚かなかった。


「月野あかりです。好きなものは可愛いもので、星野町に住んでます!」











オリエンテーションが終わり、帰ろうとしていると声をかけられた。


「月野あかりちゃん…だっけ。あたし咲彩だよ。星野町に住んでるって言ってたよね?あたしも星野町なの。一緒に帰ろう!」


今日あかりに女の子が声をかけてくれたのはこの子が初めてだ。

あかりは、女の子の友達だ!しかもかわいいー!

と、漫画の主人公みたいな気分になっている。


「もちろん!一緒に帰ろう!」


2人はお互いに質問し合いながら教室を出た。











「疲れたー」


伸びをしながらあかりが言う。

半日で下校になるため、帰り道もまだまだ暖かい。


「もう、あかりってば。今日は何にもしてないのと一緒でしょ?」


隣を歩いていた咲彩が笑いながら言った。

高い位置で結んである巻かれたポニーテールは、動くたびにふわっとなびく。

女同士だからなのか、すぐに呼び捨てできるような仲になっていた。


「だってすっごく緊張しちゃったんだもん!一気にほぐれると眠くなっちゃうなぁ…」


あかりはあくびしながら答えた。

暖かい日射しが当たると、より眠くなるのを感じる。


「そういえばあかり、家はどのへん?」


「もうすぐだよ。ほら、あそこの赤い屋根のとこ」


「ほんと!?あたしその向かいだよ?奇跡だね!」


「ね!」


2人は手を取り、飛び跳ねて喜んでいる。


「じゃあまた明日ね!」


「うん!じゃあね!」


そう言って2人は手を振りながら解散した。









「ただいまー」


家に帰るとお母さんがお昼ご飯を作ってくれていた。


「おかえり、お友達できた?」


「うん!咲彩って言うんだけど…」


それからあかりは咲彩と早乙女、それから入学式の感想を両親に話した。




その日の夜

あかりが風呂を終え、自室でスマホをいじっていると、窓の方から


ドンッ!


と鈍い音が鳴った。


「な、なに……?」


恐る恐るカーテンを開けると、窓にはハムスターが張り付いていた。

あかりは急いでハムスターを窓からはがして部屋に入れた。


「ゼェゼェ…ハァ…」


息の切れたハムスターが呼吸を整えている。


「だ、大丈夫?」


あかりは不思議に思いつつもハムスターを手のひらに乗せた。


「さわるな人間!」


ハムスターは急に床に降りた。


「し、し、喋ったぁ!?!?!」

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