世界は幕を引く

@1904_asd

傲り

異世界勇者の旅の終わり。

魔王討伐の最終局面に無粋な一矢が勇者に突き立つ。

それは、勇者を異世界に招く陣に仕込まれていた。一つの終わり。

生贄にされた者たちに勇者自身が討伐してきたモノの怨嗟が宿る。


勇者を召喚術を用いた国より放たれた刺客は忠実に使命を果たした。

勇者の肉体と魂が怨嗟に喰われ、術式に法り魔王諸共爆発四散する。

その威力は魔王城を跡形もなく消し去り、跡地をガラスで覆い尽くした。


―――――――――――――――――――――――――――――――


そんな勇者物語を眺めているモノ。

そのモノは一つの物語の終わりに満足げに頷き、術を行使する。

勇者の再生と送還、魔王の力の拡散。


召喚直後の物語の始まりから、再現した空っぽの肉体。

魂の核心部が喰われる前に拾った勇者の魂。

混ぜ合わせて、元居た場所へ送り返した。


魔王の力の拡散は魔物の拡散。

人類の安全地帯は無くなった。

勇者と怨嗟に魔王の全てが混じり合い生じたのは生きとし生けるモノへの呪。

魔力を媒介に負の感情を喚起し、魔物という形を与える。

魔力が大きければ大きいほど、強大な魔物を呼び込み。

人が多ければ多いほど、負の感情は喚起される。


術の行使の結果を粗方眺めたモノはそっと姿を消した。

新たな物語を求めて。





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