佳奈ちゃん爆食い伝説

Rei

後輩の食い煩い

平凡な大学生で、3年生でテニスサークルの副会長をやっている俺は、上級生だけの部会会議を行っていた。先日、入部してくれた新入生の親睦会を行い、自己紹介カードを書いてもらった。学部の事情で親睦会を欠席していたメンバーもいたため、新入生の事を知るために自己紹介カードを眺めあっていた。


 実際に会っていない為適当に垂れ流す程度だったが、一人だけ目に留まった。


 特技の欄に、


めっちゃご飯食べます!飲み会で元取ります!


と豪語している女の子がいたのだ。名前は上坂佳奈


「大食い?女の子の言うめっちゃ食べるってあんま信用出来なくない?」


「あー分かるわ」


わざわざ特技の欄に記載すると言うことは、自信あるんだろうなーとは思った。幸い、来週の初回の練習の後に飲み会を予定している。そこで真偽の程が分かるだろう。


「つかさ、どのくらい食うのか知らんけど、ギャル曽根とかその辺と同じくらいだったら、そもそも飯連れて行けないくね?」


「あー確かに、出禁だもんな」


恋愛事を唆されると面倒なので、部員の前でこの子の事は適当にあしらったが、他に数人居る新入生の中でも、佳奈ちゃんはダントツで気になっていた。


 一週間後、テニスの練習へ来た佳奈ちゃん。顔は少し幼さが残る童顔寄りで、ショートカット。腕や脚の筋肉も引き締まっていて、出るところもしっかりと出ているアスリート体型だ。身長も高めでスタイルも良いため一際目立っていた。メイク等はあまりしていないように見えるが、全く問題ない程顔面の偏差値が高めだった。


テニスの練習は熱心に参加していて、汗をかいている姿が様になっており、童顔寄りではあったが、練習中の表情は幼さをかき消し、凛としたという表現が似合う爽やかな印象だった。練習も真剣そのもので、こちらが根負けしそうな程、彼女からの圧と覇気があった。正にスポーツウーマンというところだ。


 練習が終わり、飲み会会場の焼肉屋へと向かう部員達。十五人ほどの部員達は宴会場に座り、お酒を呑み交わしながら歓談をしていた。落単の話や、バイト、恋バナなど、至って大学生の飲み会らしい話題だった。


 新入生達は、慣れない飲み会の場で萎縮してしまう子や、先輩と仲良くなろうとする子もいた。ただ、そんな中、ひたすらオーダーを取って肉を焼き、茶碗いっぱいの白米と共に頬張っている女の子がいた。誰と話す訳でもなく、ただひたすら肉を食っていた。佳奈ちゃんであった。私服はロングワンピース。練習中の凛とした印象とは別で、幼さを活かしたコーデで、清楚で少し芋臭い印象になっていた。そんな娘がもりもり焼肉を頬張っているのだが。


仲良くなろうと話しかけて来る後輩を適当にあしらいつつ、佳奈ちゃんの食事をまじまじと見ていた。いつの間にか隣の肉焼き網も使い始め、ご飯も3杯おかわりしていた。


飲み会の90分食べ放題も終了間近。部員が二次会のカラオケに行く人を募集していた。


佳奈ちゃんのテーブルには、空皿でいっぱい。ご飯のお茶碗も6つあった。で、ラストオーダーが終わってしまい、少々不服そうだった。彼女だけで7人前は食べていた。


俺は二次会よりも佳奈ちゃんの方が気になっていたので、一人ぽつんと座っていた佳奈ちゃんに話しかけた。


「佳奈ちゃんだよね?凄いね。めっちゃ食べるんだね」


「あ、先輩…恥ずかしい…私お腹空くといっつもこうなんですよ…」


ワンピースの上からでも、バランスボールでも入れているのかと疑う程、お腹がぽこっと膨らんでいるのが分かった。


「…食べたりなさそうな顔だね。二次会カラオケらしいけどさ…二人で抜け出してご飯食べようよ。ご馳走するからさ、お腹いっぱいにさせてあげるよ」


お腹をさすりながら、少し寂しそうに焼肉網の方を見ていた佳奈ちゃんだったが、それを聞くと嬉しそうに


「え!本当ですか!?一人暮らし始めてから全然お金無くって…」


「おお!じゃあ抜け出しちゃおっか」


俺と佳奈ちゃんは二人で飲み会を抜け出し、部員達に目撃されないように、電車で何駅か先の繁華街に佳奈ちゃんを連れて行った。


電車に揺れている間も佳奈ちゃんはお腹をさすっていて、久しぶりの焼肉美味しかったと可愛らしく言っていた。普段は練習中とは別人のように愛嬌のある娘だ。ただ練習中は少々クールなところがあり、覇気も凄かったため、同学年とは距離を置かれているようだ。


繁華街について第一声で、あれ美味しそう!と指差したラーメン屋に入り、コッテコテのラーメンを頼み、同じくもりもり麺をすすっていた。焼肉屋よりもずっと表情が柔らかく美味しそうに頬張っている。俺も嬉しくなって、彼女の替え玉だったり、おかわりもどんどんOKしてしまった。次はあの店に行こう!とラーメン屋だけでなく繁華街の目に留まった美味しそうなお店に手当たり次第に入って行ってしまった。


「ふう…ふう…あ!あれ!美味しそう!行きたい!」


「だ、大丈夫?ちょっと苦しそうじゃない?休憩したら?」


焼肉に加え、何件もハシゴをしている。彼女はそう気にしてはいないのだが、彼女のお腹は凄まじい大きさになっていた。


「んぐ…ふう…うん。そう…だね。息あがっちゃた…少し、休憩しよ」


ワンピースが大きく出っ張り、まるで双子を妊娠しているかのようなテレビで見た大食いタレントの食後のお腹顔負けであった。


ちょっとした緑地のベンチに座り、お腹をポンポンと叩き、呼吸を整える佳奈ちゃん。


「まだ全然食べれそうなの?失礼かも知れないけど、あとどのくらい食べれそう?」


「うーん…私もあんまりこんなに食べる経験は無いんだ。卒業祝いの時に、これくらい食べさせてもらった時以来かなあ」


一件あたり軽く3、4人前は食べて店を出ているので、焼肉と合わせても、相当な重量である。


「でも、まだ腹六分目というか、全然食べれそうな感覚はあるんだよね」


「そっか…食べれそうなら全然ご馳走するけど、無理しないでね?」


「うん!」


そう言うと佳奈ちゃんはひょいと立ち上がり先程美味しそうと言っていたお店に入って行った。俺も、後に続いた。


結局、俺達は終電間際までハシゴを続けた。


「佳奈ちゃん!無茶なのは分かってるけど!終電逃しちゃうよ!」


「う、うん…分かってるよ…ふんっ!…はあ…はあ…お腹おも〜い…」


同じく終電間際で駅に向かっている人々が、思わず二度見してしまうほど、佳奈ちゃんのお腹は大きく膨らんでいた。一人ではヨロヨロしてしまうため、肩を貸しながら、駅へ向かっていた。


だが、駅の前に着いた時、佳奈ちゃんの家の終電が行ってしまった。


「あー!」


「終電…」


「…食べ過ぎ。」


「えへへ」


両手でお腹を支え、俺に肩を貸してもらって何とか歩けている佳奈ちゃん。結局、俺の家に泊まるしかないだろうという事で、佳奈ちゃんは俺の家に泊まる事になった。玄関を開け、やっとの思いでソファに座った二人。


「ご、ごめん…私の不始末で迷惑かけちゃって…」


「いや、全然良いよ。誘ったの俺だしさ」


「それにしても、本当に凄いね!」


「私も、こんなに食べたのは初めて。ちょっと流石に苦しいよお」


くるぶし近くまであったはずのワンピースはお腹のせいで膝下しか隠せていない。そんなサイズのお腹は、ぽんぽんとお腹を叩く彼女に対して、岩のような反射音を鳴らしている。


「んんん…苦しい…ごめん、服脱がせてくれない?お腹重すぎて自分じゃ無理かも…」


佳奈ちゃんは両手をあげて、俺はワンピースを上に引っ張って脱がせた。


練習の時に見えた引き締まった腹筋も、大量の食材が詰まった胃袋になっていた。彼女のスラっとした身体に似つかぬ大きなお腹。このサイズは大食いタレントのものでも見た事がないような気がする。当人も息が苦しいようだ。


「ん…脱ぐと少し楽になった…先輩、お腹さすって…」


「さすってって…」


さすって良いのか不安になる程パツパツなので、思わず声に出てしまった。その後グッと手を掴まれ、お腹に手を当てられた。


先程の岩のような反射音の通り、佳奈ちゃんのお腹は岩のように硬く、本当に人のお腹をさすっているのか疑わしくなった。


「……」


無言無表情ではあったが、確かに何かに反応した佳奈ちゃん


「甘くて美味しそうな匂いがする」


冷蔵庫の中にあったチョコレートケーキの匂いを看破されてしまった!


「え、よく分かったね」


「…食べたいなあ…」


「い、いや、これは…」


女友達への誕生日プレゼントとして買ったケーキなのだ。申し訳ないが、佳奈ちゃんに食べさせる訳にはいかない。


「…え?」


「ごめんね。プレゼントなんだ。我慢して?」


「…は?」


「…こんだけご飯食べさせてくれたのに。家まで連れ込まれたのに。」


「今更ケーキ一つケチるの?」


「いやいや、だからさ…」


「…私、もうお腹いっぱいなんて一言も言ってないんだけど」


そう言えば、佳奈ちゃんが食べるのをやめたのは終電間際だったからであって、息が苦しいのもお腹が胃を圧迫しているからであって、佳奈ちゃんは一言もお腹いっぱいと口にした事は無かった。


「ここまで来たならお腹いっぱいにさせてよ!!私今まで一度もお腹いっぱいになった事ないの!!!」


「そのケーキがダメって言うなら何か買ってきて!私お腹いっぱいになるのが夢なのおおお!」


家に入ってから突然脱ぎ出したり、お腹をさすって等、そもそも様子がおかしかったが、ついに泣き始め、会話が通じない程動揺している。


「分かった!分かったから!ケーキ食べていいよ!弁当とかいっぱい買って来るから!全部食べて良い!」


1ホールサイズのチョコレートケーキを切り分けた。


ケーキ中央に「さおり」と書いてあるチョコを機嫌悪そうに食べ、むしゃむしゃとケーキを貪り始めた。


俺はその隙にと言わんばかりに、近くのコンビニへ走り、棚にある限りの弁当やおにぎりを買ってきて、まるで貢物のように全て佳奈ちゃんに差し出した。今の佳奈ちゃんはまるで獣のように弁当を貪り尽くす。家に入るまでは、とにかく愛嬌のあって可愛い娘だと思っていたが、あの態度の変わりようを見ると恐ろしくて仕方が無かった。買ってきた弁当達を平らげてみせる度、もう許してくれ、勘弁してくれと言わんばかりに、泣きながら家とコンビニとの道を走った。


結局、朝までそれは続いた。朝日が部屋に差し込み、辺りが明るくなってきた頃、それは終幕を知らせた。


弁当のゴミだらけの部屋の真ん中、半分ほどおかずが残った弁当を睨み、ゆっくり呼吸をする佳奈ちゃん。


痙攣のように全身が震えており、ゆっくり口を開けて、残りの弁当を食べようとするそぶりを見せるも、全く箸が伸びない。


ひゅー、ひゅーと呼吸も浅かった。


数分程弁当との睨み合いが続き、ついに佳奈ちゃんが白旗を上げた。


「…食べ…れない…」


そういうと全身の力が抜けた様に、箸と弁当が落ち、気絶したかの様にだらんとした。


怖い佳奈ちゃんがようやく止まり、ビビリながら恐る恐る近づく俺。


近くに来ると目線が合った。


「お腹…いっ…ぱい?」


「…もう…無理…」


「大丈夫!?しっかり!」


グッと手を握ると、しっかり握り返してくれたので、胸元まで手を持って来る。


「疲れちゃった…」


「食べ過ぎ…なんてものではないね、これは」


「……え…えへへ…」


すごく無理矢理に作り笑いをした佳奈ちゃん。良かった。元の佳奈ちゃんに戻ってくれた。


笑顔がたまらなく愛おしかったので、もう一つの手で佳奈ちゃんの顎を支え、キスをした。


「…先輩…あり…がとう…」


「どういたしまして」


言い終わる頃には既に眠ってしまっていた。今日も大学で講義があったが、こんな事があっては行く気にもならなかった。部屋に連れてきた頃の倍近くまでお腹は大きく膨らんでおり、大食いというもので成立していいのか分からない大きさであった。皮が破けずにいる事が奇跡であり、痛々しく血管がそこらじゅうに青筋立っていた。


その後丸2日、ゴロゴロとお腹は消化活動を行っていて、彼女は目を覚ます事は無かった。起きた時には凄まじい便意に襲われ、半日トイレに篭っていた。


その後の体調ケアなども含め、大学に佳奈ちゃんが再び通い始めたのは4日後の事であった。





佳奈ちゃん食事量(参考、シコリ用)


焼肉屋 7キロ


ベンチに座って休憩した時 18キロ


終電間際の時 32キロ


フィニッシュ 58キロ


プロフィール


上坂佳奈(18)


誕生日7月25日


身長166cm 体重55キロくらい。


胸はけっこうある。ウエストは引き締まっている。ケツはそこそこ。


経営学部(聞いてない)



後日談


何日も大学に来れなかった佳奈ちゃん。二次会を二人で抜け出したのを目撃されてしまい、サークル内で恋愛を唆され、(実際キスしてるけど)居辛くなってしまった。幸い、俺も佳奈ちゃんも他の人に手を出したりするほど尻軽ではないため、俺は就活と言い訳してサークル活動からはフェードアウトしていった。


で、佳奈ちゃんはどうなったかと言うと、その後もテニスの練習には積極的に顔を出して汗を流していた。お腹が空くと俺に連絡が来て、食べさせて欲しいと言ってくる。あの日の体験は、自分がおかしくなってしまったのも含め、限界を知る事が出来てとても良かったそうだ。お金が大変かかる悪いオンナのため、1ヶ月に一度位しか食べさせてあげられないが、終電間際まで美味しそうにご飯を頬張っている彼女と、それに伴ってどんどん大きくなっていくお腹を見るのが日々の楽しみになった。…つまり、お付き合いする事になった。もう付き合って半年程経つが、飯を食う以外のデートを全くしていないのはどうかと思うが、ひたすらに飯を食う彼女を応援したくなってしまう。ウィンウィンである。

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