透明な深いブルー

翡翠

 

 大地をうように忍び寄る風が、氷刃ひょうじんのように頬を撫でる。


 その冷たさは、冬の眠りから目覚めたばかりの夜気やきが触れるかのよう、じわじわと骨の奥まで染みる。


 夕靄ゆうもやに溶け込む柔らかな光がどこか遠くへ逃げ去ったあと、空は静かに、深い青の層を増す。


 背筋を伸ばし見上げれば、都会のビル群が切り取る空が、孤独にむ。


 街路樹がいろじゅ枝先えださきかすかに震え、枯葉がひとつ、足元に落ち、かじかむ手を大きなポケットの中に差し込む。


 周囲にはコートのえりを立てた人々が小走こばしりで通り過ぎていき、その音だけがくさびのように響く。


 誰もが帰路きろを急ぐこの刹那せつな、ひとり立ち尽くし凝望ぎょうぼうするそのホリゾンブルーの空は、まるで心の隙に浸透するように、深く、深く、ただ透明だった。

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透明な深いブルー 翡翠 @hisui_may5

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