植民地からの脱却 シュラベッヘン戦記

五平太

プロローグ独立宣言

 まだ夏の暑さが残る9月11日 シュラベッヘンのグラッテブルの広場で蒼く澄んだ空から照らされる光を反射する黒光りの身体を持つかつて日本に住んでいる人が見たらカブト虫が人型になった様な見た目をした男ジン・ジラッペンが藍色のスーツ姿をきっちりと来て大衆の前の演説台に上がった


「諸君、我々は今日を持ってルージニア帝国からの独立を宣言する」


ジンがそう言うと民衆は神妙な面持ちでジンを見つめるジンは一息ついてから言葉を紡ぐ


「これは紛れもない我々の勝利だ」


その言葉を聞き民衆の一部が歓声を上げようとするがジンはそれを遮る様に話す


「だか我等はあまりに多く喪い過ぎた田畑は荒れ果て村は略奪の限りを受けた、此処にも友を恋人を妻を子を親を喪った者も多いだろう」


その言葉を聞き一部の民衆が啜り泣き始め先程歓声を上げようとしていた人々はバツが悪そうにしている


「だが下を向いてはならない過去を振り向き下を見つめた所で何を還っては来ない」


彼の言葉は酷く冷酷だった、だか彼の声は涙ぐみ初めていた


「我等は生き残ったのだそして勝ち取ったのだ勝利を自由を独立をそして未来を」


民衆は一言一句の彼の言葉に耳を傾ける


「だから…だからこそ我等は散っていった者たちの分を生きて行かなくてはならない」


彼は何処までも蒼い青空を仰ぐ


「嗚呼…駄目だな…今日は砂埃が酷いな…目に塵が入ってかなわん…」


彼は袖で目元を擦るその裾は微かにだか湿っていた


「我らは我等があの世に逝く時に先に逝った友たちに笑われん様にこの国を護って行かなくてはならない」


彼は深呼吸をする 何万もの人々が集まる広場が静寂に包まれる


「これはゴールではない 我らはようやくスタートラインに立ったに過ぎない諸君らはスタートラインに立っただけで満足するのか?」


彼がそう問いかけると民衆は爆発した様に


「んな訳ねぇだろ!」「俺たちの戦いはこれからだ!」「違うわ!ぼけっ!」「あ ほ く さ」「イクゾー!!!」「そんな訳無いから(溢れ出る覚悟)」「舐めてんのか?ごラッぁ!!!」等と野蛮な言葉が聴こえた気がするが気の所為だろう


「今まではプロローグに過ぎない!これから我らの物語が始まるのだ!この物語の結末…いや、行く末を決めるのは誰だ!」


民衆が雷鳴の如く叫ぶ


「「「「「我らだ!!!」」」」」


「その通りだ!もう決して誰かには決めなどさせない、我らによる 我らの為の 我らの物語を!!!」


「「「「「「「「「「「「ウォォオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」」」


まるで広場だけが真夏の正午に戻ったかの様な熱気が広場を支配する


人々は蒼い青空に何時までも万雷の歓声を上げていた




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

植民地からの脱却 シュラベッヘン戦記 五平太 @sukemaru225

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ