第3話友達のはじまり

-昼休み-


約束通りハルがLINEで2人に連絡を取ってくれていたので、1-Fの隣の空き教室に集合して4人でランチをする。


ハルと先に空き教室で待っていると、2人が入ってきた。


「来たよーん晴!んで、私達に合わせたい子って?」


茶髪のショートカットの子がそう言いながら私をみた。


「のの香ちゃん、この子がLINEで話したしおんちゃん。あーしと同じクラスで隣の席。」


茶髪のショートカットが貞子先輩の妹らしい。


「ごめんねー急に呼び出しちゃって。貞子先輩と友子先輩に色々世話になってるし、その妹さん達とタメで同じ学校ってハルに聞いたからさ、挨拶だけでもしておこうかなーって思って。武田信音、南アルプス中学ナンプスチュウ出身よろしく!」


取り敢えず3年間は同じ学校だし、仲良くやるに越した事はない。そう思った私は呼び出してしまった手前もあるしで、先に軽く挨拶をした。


「おぉ!姉貴から聞いてる聞いてる!特攻服はもう貰った?明日渡すんだーって言ってたよ。あと、ウチのチームの新人で、同じ学校だから仲良くしてって言ってた。改めて自己紹介。私が馬場のの香で、こっちが清美さんの妹の友子ね。よろしくしおんちゃん!」


姉妹だからかな?貞子先輩みたいに明るくて優しい感じがする。


「あーアンタがパトカー潰したナンプス中の武田!パトカー潰したって聞いたから、ゴリラみたいなヤツかと思ってたんだけどさー。うーん、普通の女子だね。ビックリだわ。」


なんか事実とは異なる話が1人歩きしてしまってる様な…。


「えー‼︎しおんちゃんパトカー潰したの⁉︎マジで?極悪ぢゃん‼︎」


それを聞いたハルが隣でビビってる。


「違う違う、アレは事故だって!イヤホンで音楽聴きながら学校帰ってた私も悪いんだけどさ、私パトカーのサイレン聞こえてなくってさ。信号青だったし、横断歩道渡ってたらパトカーが猛スピードで走ってきてね。それに気づかない私を避けたパトカーがガードレールにぶつかって炎上。後から騒ぎを聞きつけた野次馬の中にいた同級生が、信音がパトカー潰したって大騒ぎ!んで、私は一躍時の人って訳。」


取り敢えず4人で適当な椅子に座り、それぞれお弁当を広げる。


「なーんだそうだったの!うちの中学でもかなり噂になってたよ。ちょっとヤンチャな男子なんて完全にビビってたよ!同い年でパトカー潰した女子がいるって。私もそのうわさ聞いた時にはさ、世の中にはヤバいのいるなー、お近づきになりたくないわーって思ってたんだけど、何か安心した。あーゴメン、私が山県知子。山県清美の妹ね。友子でいいよ。しっかし令和の時代にレディースに入るって、しおんは気合い入ってるね!」


本当は交換条件が良かっただけなんだけどね。


「まぁ、その辺は色々とあってさ。信虎さん直々のスカウトってのもあったし、私実はバイクにも興味あってね。来週から自動車学校行って免許取る予定だしね。特にやりたい事もないしさ、まぁーいいか!みたいな。ところで皆はチーム入らないの?」


私の問いに、3人は顔を見合わせ何で?って顔をする。


「いやいやいやいや、しおんちゃん今は令和だよ?昭和じゃないよ?それにあーしギャルだしさ。2人はどうなん?姉さんがたバリバリのレディースぢゃん?」


確かに。

晴はまぁギャルだしその辺はわかる気がする。けど2人は姉がレディース。多少は憧れたりしないのだろうか?


「全く興味ないって訳じゃないけどさ、やっぱ周りの目がねぇ〜。友達はみんなギャル系だしね。友子はどうなの?」


のの香はまんざらでもなさそうな雰囲気がするけど、乗り気でもないみたい。


「うーん、私はバイクと言うか2輪が苦手だからな。恥ずかしい話、未だ自転車にも乗れねーし。後、一度姉貴の後ろに乗せて貰ってツーリング行ったんだけど、地獄みたからな。別にレディースとかは全然オッケーなんだけどなぁー。」


何だかんだで2人とも別にレディースを毛嫌いしてる訳では無さそうだ。


「あ!そう言えば同じ一年でレディースに興味ありそうな子が他にいたな。1-Aの内藤昌美と1-Bの高坂澄子。あいつら市川三郷中出身でさ、第二土曜の夜に何度か見かけた事あるけど、"華火"って族の集会に中学から混ざってたよ。確か人数少ないけど、めちゃ気合いが入ったチームだって姉貴が言ってな。タメだし、一回話してみたら?案外気が合うかもよ?」


友子が思い出した様に話す。

市川三郷か。


南アルプス市から離れてるからあんまり詳しくないんだけど、同じ学校だし仲良くするにもしないにも、取り敢えず一度会っておくのもいいかもしれない。


「1-Aの内藤昌美と1-Bの高坂澄子ね。ありがとう、近々話し掛けてみる!…ところでその2人って結構ヤバかったりする?」


声掛けていきなり喧嘩になるのは避けたいから、その辺はちょっと聞いておきたい。


「2人ともヤンキーだったけど、いきなり絡んできたりはないと思うから大丈夫だと思うよ。私顔分かるから付き合ってあげようか?」


やっぱ馬場先輩の妹だけあって面倒見良くて優しいかもしれない。


「え、マジで!サンキューのの香!私顔分からないから助かる〜。近々ランチかケーキセット奢るわ!」


この提案は本当に助かる。


「えー!しおんちゃんズルい〜!あーしだって、のの香ちゃんと友子ちゃん紹介したじゃん!あーしもケーキセット食べたい!」


確かに。

ハルが紹介してくれなかったら、この話は無かった訳だし。ハルにもケーキセット奢るべきだな。


「んじゃ、私は美味しいケーキが食べれるお店紹介するから、私の分もよろしく!」


友子はチャッカリしてるが、初期投資は大切かも。


「もぉーわかったよ!お近付きの印に、今回は3人まとめて私が奢る!」


やったーと言わんばかりに3人ともニッコにこ。


「何か噂に聞いていた信音って、マジヤバイってイメージだったけど、めちゃいい子じゃん!こうやって出会ったのも何かの縁だし、改めてよろしく!」


新しい環境下では、人間関係をいち早く、いかに築いていけるかが重要になってくるんだけど、取り敢えず心配なさそうだ。


「私の噂に関しては、パトカーの一件から根も葉もない話に尾鰭がついて一人歩きしちゃっててさ。まぁ、誤解を解いて回る殆ど暇じゃないし、労力もないし面倒だしね。どーでもいいかって思っちゃってたから、誤解されても仕方ない。噂なんてそんなもんだし、本当の事を分かってくれる友人が何人かいるだけで私はいいと思ってる。こんな私だけど、良かったらよろしくね。」


その後はLINE交換とお互いにお互いの事を色々話して、充実したランチを楽しむ事が出来た。


「んじゃ、また放課後!」


そう言って空き教室を後にした。




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爆裂天然暴走娘、武田ちゃんの野望!!~全国制覇始めさせられました~ 横須賀じょーじ @yokosuka-george

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