第2話ヤンキーとギャル
昨日は嵐みたいな一日だったな〜。
入学初日から信虎さんに呼び出されて、暴走族に勧誘されて。
でもでも!幻のBLまんが、"俺とお前と局中法度 ~土方歳三、マジの恋に落ちました~。"の第2巻が手に入ったし、英大君のサインとツーショット写真‼︎
くぅ〜最高‼︎
なんか英大君いい匂いしたな。
えへへっ。
なんて事を考えながら、私は先日入学した昭和商業高等学校の門をくぐる。
入学二日目だし、中学からの知り合いも少ないからまだ殆ど友達がいない。取り敢えずさっさと友人を作って、楽しいハイスクールライフを送らねば!
なんて事を考えながら我がクラス1年F組に向かう途中、階段のおどり場で声を掛けられる。
「アンタ1年の武田信音?ちょっと顔貸してくんない?」
ちょっとだけヤンキーぽい女子に声を掛けられる。
2年かな?リボンが黄色だ。
「すみません、顔をお貸ししたいのはやまやまなんすけど、これ取り外し出来ないンスよ〜。」
うーん、顔って貸す事出来ないよね?何だ?っか、凄い事言うなこの人!
「っか、私の顔なんて借りなくても、先輩凄く可愛いじゃないっすか!正直、私も先輩みたいな可愛い顔に生まれたかったっす」
ちょっと悲しそうにそう言うと2年の先輩は笑い声をあげる。
「くくっ、あっはっはっは!確かに!顔を貸せないよね!武田、アンタめちゃ面白いね!っか、顔貸せってそう言う意味じゃないって。しっかし私の顔が可愛いって?ありがとう!アンタも顔可愛いから自信持ちなさい!あ、私は2年の
そう言うと、御喜多先輩は階段を登って行ってしまった。
貞子先輩って、馬場貞子さんだよな?
昨日の今日だけど、呼び出される様な事なんかあったっけ?
まぁ、いきなり殴られたりしないだろうし、取り敢えず行ってみようかな。
私は2階の音楽室に向かう。
大抵、◯◯室ってーのは、廊下の1番突き当たりに有るもんだよな?
「って、ほらビンゴ!」
なんて独り言を言いながら、音楽室のドアを3つノックして入室する。
因みに2回ノックはトイレだから覚えておくといいよ。
「はよーございます、武田信音参上つかまつりました。」
入室すると、貞子さんは笑顔で迎えてくれた。
「朝からゴメンね信音!あなたに渡すものがあったから呼び出しちゃった。あ!説教とかじゃないから安心して。」
そう言うと、貞子先輩は私に紙袋を差し出す。
「これ、ウチの特攻服だから。本当はこういうのって自分で買うんだけどさ、いきなりチームに勧誘しちゃったじゃん。んで、余ってる特攻服があったの思い出してね。サイズ的に信音に合いそうだなーって思ったから、これあげるね!あとこれチームステッカーね。」
紅の特攻服。
めちゃ派手だね〜。
「あ!刺繍とかは自分で刺繍屋さんでしてもらってね!お金掛かるけどさ。あ、一応言っておくけど、ウチのチームはカツアゲ厳禁だから、そこんとこヨロシク。」
カツアゲ…厳禁⁉︎
「押忍!馬場先輩!私は無類のとんかつ・カツ丼好きっす!しかも実家じゃばーちゃんが好きだから2週に一回はカツ揚げます。それを禁止するって、暴走族のルールってのはそんなに厳しいんすか⁉︎」
そう答えると、先輩は大爆笑。
「あっはははっ!押忍とか!っか、カツアゲってそんな意味じゃないから〜。カツアゲってのは、他人を脅してお金を巻き上げるって意味!因みに私も無類のトンカツ好きよ。まぁ〜しかし、信音は面白いね!私は信音気に入っちゃったよ。そうそう私の前では、押忍!とかそんな気張らなくっていいよ。それと私の事は貞子でいいよ。私あんまり名字好きじゃないんだ。プロレスラーみたいでさ。」
カツアゲってそんな意味なんだ。
深いな〜ヤンキー用語。
しかし流石みんなに慕われる先輩なだけある。なかなか気さくで優しい人だ。
暴走族ってもっと上下関係が厳しくって、体育会系なノリかと思っていたけど、意外だ。
「同じ学校だし、困った事があったら気軽に声かけてね。信虎も他のメンバーも大体同じ学校だからさ。朝から呼び出しちゃってゴメンねー。そろそろ行こうか。ホームルーム始まるし」
そう言って貞子先輩とはその場で別れて音楽室を後にした。
しかしまさか学校で特攻服渡されるとは思わなかった。でも貞子先輩優しいな!私は小遣い少ないから特攻服代浮いて助かった。
貞子先輩もトンカツ好きって言ってたから、今度美味しいトンカツでも差入れしてあげよう!
そんな事を考えながら、1年F組に辿りついた。
窓際の1番後ろが私の席。
鞄をおろして席に着くと、取り敢えずグルっと教室を見渡してみる。
うーん、ギャル1、普通が9ってところか?
「チョリース。あーしは
横の席のギャルが早々に声を掛けてくれる。
「うぃーす。武田信音、暴走愚連隊風林火山よろしく!」
やっぱ最初が肝心だからね。
私は気合い入れて挨拶をした。
「え?何?武田っちってゾッキーなの?令和なのに?あーし本物初めて見たかも⁉︎めっちゃ天然記念物ぢゃん‼︎まぢスゲーよ‼︎武田っち‼︎あ、あーしの事は晴でいいかんね!」
何だか早々に騒がしいギャルに絡まれてしまったけど、悪い子じゃなさそう。
しかしやっぱ今時の暴走族ってのは、天然記念物扱いなんかね?
「よろしくハル!あ、私の事もタメだし信音でいいからね。」
隣の席の女子がギャルで良かったかも。真面目っ子だったら話し掛けて来なかったかもしれないし。
「OKしおんちゃん!あーしらこれからダチって事でよろしく。しっかしこのクラスだとあーしら浮いてるよね?ほとんど真面目っ子ばっかじゃん。2・3年は結構いるけど、入学したばかりのタメ年にはそういうのちょっと少ない感じ?」
確かにハルの言う通りかも。
令和の時代じゃ、ギャルもヤンキーも希少生物なのかもしれない。
「そう言えばしおんちゃん以外にも、今年は何人かウチの学校にヤンキー女子が入学してるって知ってた?あーしが知ってるのだと、1-Sの山本京子、1-Aの内藤昌美、1-Bの高坂澄子、1-Cの山県友子、1-Dの馬場のの香。ちなみに、山県友子は3年の清美先輩の妹で、1-Dの馬場のの香は3年の貞子先輩の妹ね。この2人はあーし良く知ってんだ。同中だったからさ。」
ハルはギャルのくせに意外とそっち系詳しいのかな?
「あ、良かったらダチのよしみで2人の事紹介しよっか?」
先輩らの妹なら顔見知りになっておいた方がいいかもしれない。
「マブで⁉︎ギャルのくせにハルってすげーのな!あ!これ今日のオヤツに持ってきてた
ハルは一瞬、キョトンとした顔をしたが直ぐに笑い出す。
「しおんちゃん、みのぶ饅頭って!普通今時の同世代の鞄から饅頭なんて出てこないっしょ⁉︎しかも饅頭がオヤツとか!そこは駄菓子でいいっしょ!渋過ぎるだろしおんちゃん!っかヤバい!マジでめっちゃオモロイって!」
何が面白いのか、ハルは膝から崩れ落ち、床で腹を抱えて笑い転げている。それをみた周りはドン引き。
「あー笑った!マジ3年ぶり位に爆笑した!身饅サンキューね!何かしおんちゃんとはめちゃ仲良く出来そうって言うか、真友になれそうな気がする。取り敢えずさ、昼にでも2人に会いに行ってみる?2人にはLINEしておくから、一緒にランチしよっか!あ、しおんちゃんのLINEも教えてよ。あーしのも教えるからさ!」
こうして私はこのちょっと舌ったらずな話し方をするギャル、三条晴子ことハルと仲良くなり連絡先を交換するのであった。
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