部室は時にはパーティになる
疲れた。
まさか、あんなに長い話を聞くことになるとは、それにあんなに食えるのか人間って。
少し、デートに誘ったことに後悔しながら部室に向かっていた。
今日こそは決めるんだ、今後の活動についてちゃんと決めよう!!
そう意気込み、部室の前に立つ。
嫌な予感がする。
ここで一個質問したいんだが、文芸部って静かなイメージがあるよな? もちろん俺もそんなイメージがある。だが、今目の前の文芸部の部室は……
「お、裕也じゃん」
裕也が考え事をしていると、後ろから声をかけられる。
振り向くと、あら、可愛い人が立っていた。
「その、短いスカートは校則違反じゃないか?」
「別に」
照れながら、スカートを少し下ろす沙也加。
そんなに照れるならスカートをあげる必要はないでしょ。疑問に思いながらドアを開ける。
ドアを開け広がった景色は、そうだな、同窓会だな。
お菓子を机いっぱいに広げ、ジュースに漫画も机に置き、まさにパーティーだった。
俺の普通な青春を返せ! 俺の安心できた場所を返せ! 文芸部を返せ!
さて、中に入って落ち着くか。
裕也は渋々中に入る。
俺の憧れの場所が。
「あ、裕也じゃん」
麻衣は裕也の存在に気付き、手でこっちに来るよう合図する。
「この状況は何があったんだ?」
裕也は渋い顔で麻衣を見つめる。
「あーあー、私ダイエット辞めたんだ」
あの、ダイエットの話まだ続いていたのかよ。本当に、これ以上やせる必要無いと思いますが?! それで太っているなら俺はどうなるだよ。
一人でツッコミをしていると、麻衣は手を伸ばしチョコを渡してくる。
「ありがとう」
「裕也も太らないとね!」
ニッコリと笑いながらチョコを渡し、仕事が終わったかのように寛ぐ麻衣。
あのー、ここ部室ですよ? 部室、ぶーしーつ。
大切だからね。部室だから!
裕也の心の叫びは空しく散り、パーティーは続く。
「でもさ、昨日の裕也格好良かったよ」
明美は幸せそうに語る。
昨日は、確かに楽しかった。俺が話を聞いて、聞いて、聞いて、聞きまくって楽しかったな!
少しの苛立ちをぶつけてながら、明美に顔を向ける。
「それはどうも」
チョコを開け口に入れる。
あっまこのチョコ。
なんていうか、甘すぎで甘くなる的な。
た、はは。
絶対この状況だから俺もおかしくなっている。じゃなきゃこんなおかしなことは言わない。
だから、俺が悪いんじゃない、この状況が悪いんだ!
裕也は自分の恥ずかしさを他人のせいにして、定位置に着く。
「さて、静粛に」
裕也の声により、騒がしかった部室は静かにならない。
そう、裕也の声は誰にも届かなかった。
みんなそれぞれ、スマホを触り、甘いお菓子を食べ、友達と喋り、青春を謳歌していた。
ちなみに、裕也に関しては、静かに読書を始めていた。
この状況で本を読んでいるのは空気が読めないって?? 何バカなこと言ってるんだよ!!
この状況だからこそ読むに決まってるだろ。
だって、この状況は普通の青春じゃ……
「裕也、写真撮るぞ?」
麻依は手でこっちに来るよう合図する。
「俺は、写り……」
そうだった、俺は否定権が無いんだった。
右肩を明美が持ち、左肩を彩音が持つ。
「はいはい、じゃー笑って」
笑えるかよ。
その時、俺の顔を明美がべったりと触り、汚い笑みを浮かべさせられる。
おいおい、この状況普通の青春じゃなくね?
どうやら俺の青春は普通じゃない @sink2525
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。どうやら俺の青春は普通じゃないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます