第7話



宰相サヴィーテは王城に戻っていた。


「各国への使いはもう出ているね?」


「はい、あの後すぐに。しかしロミアとアーリムも呼んでよかったのですか?」


「報告義務があるからね。それに隠し事をして争いの種になっても困るよ」


「ロミアはともかく、アーリムは参加しますかね?前回まで一度も調査に参加していないと聞きましたが」


「決めるのはアーリムだよ。じゃあ私は王に報告してくる」




「サヴィーテです。戻りました」


「おう!ご苦労さん」


ヴェルズ王国国王ゴドス。ドワーフだが身長は170cmとドワーフとしては大柄。ドワーフは堅苦しいのが嫌いな者が多いが彼もそうであった。


「どうだったお客人は?」


「貴族や地位の高い者ではないようですね。おそらく一般人かと。ですが高い教養が感じられます」


「そうか。乗り物はどんなだった?」


「薄い金属板で出来ているようですね。窓はガラスです。車輪が馬車と違ってかなり小さいのですが、接地面に柔らかい素材が使われているので揺れが少なくなっていると思われます。どうやって動くのかはまだわかりませんが、我々の魔法、魔導とは全く異なる技術体系なのでしょう」


「そうか。やっぱり見てみてぇな。次いつ行くんだ?俺も行くわ」


「まだ万が一のことが無いとは限りません。本調査の時までお控えください」


「お前が一緒なら大丈夫だろ?なんならカムジとファウもいるんだし」


「いやしかし・・・」


「よし決めた!次は俺も行くからな」


「陛下!」


気取らず誰にでも気さくに接するので皆から慕われてはいるのだが、少々手のかかる王であった。




夕食はファウの希望で元の世界の料理を俺が作る。厨房ではやはり異世界の料理に興味があるらしく、調理してるところを見せてほしいと言われた。でも見られるだけってのはやりにくいので手伝ってもらうことにする。

なおまだ俺自身がこっちの料理を食べていないこともあり、俺は一品だけ作って残りはそれに合うようなのを料理人さんたちにお願いした。

部屋から食材などを持って厨房へ。


「材料はほとんど持ってたんですけど、牛乳だけ無いのでお願いしたいのですが?量はこのカップのこの目盛りくらいまでで」


持っててよかった計量カップ。普段なら牛乳なんて入れないのだが、ここはきちんと作ろうとスマホ見ながらネットで検索したレシピ通りにやる。ちなみに俺は牛乳飲めないので持ってなかった。


「わかりました。ロウ、頼む。私達でも同じ様な物が出来るかどうか、こちらの材料でも作ってみたいのですが?」


料理長のアルムさんが聞いてきた。


「もちろん構いませんよ。どんな風になるか楽しみです」


ロウさんが牛乳を持ってきてくれた。


「ありがとうございます。それでは始めましょうか。ハンバーグと言う料理を作ります。材料は挽き肉、玉ねぎ、卵、パン粉、牛乳、塩と胡椒です」


「パン粉とは?見た感じ焼きあがったパンを細かくしたものでしょうか?」


「そうです。これは無くても出来ますが、このような挽き肉を使う場合は肉汁を中に閉じ込める効果があります。使う量は多くても肉に対して一割くらいです」


などとわかったようなことを言っているが、今ネットで知ったことだったりする。そんなの知らないで使ってたわ。


「このように細かく加工した肉は初めて見ますね。何の肉ですか?」


「これは豚肉です。挽き肉ってこちらには無いのですか?」


「無いですね。肉の種類は豚以外でも?」


「ええ、大丈夫だと思います。豚以外や豚と牛を混ぜたものなんかもありますから」


向こうの方では肉の塊を挽き肉にする作業が始まったのだがこれが凄い。切り出した肉をまな板の上で細かくしていくのだが、これやってる料理人さん、両手に持った包丁が見えない。もしかすると身体強化魔法とか使ってるのかもしれん。

ああ、この世界ではナイフや剣で料理するってことは無く、料理用の刃物があった。翻訳も包丁だ。


「では玉ねぎをみじん切りにして炒めます」


炒めている間に向こうでは挽き肉が出来上がっていた。


「肉に塩を入れて混ぜます。粘りが出たら炒めた玉ねぎと残りの材料を入れて混ぜます」


料理人さん、数人でやってるのもあるが作業が早い。今は俺とほぼ同時進行になっている。パン粉は俺のを分けてあげた。


「これを好みの大きさに分けて焼きますが、中の空気を抜かないとうまく焼けません。その作業がやりにくくなるのであまり大きくしすぎないように」


某アニメに出てきた誕生日に食うクソデカいハンバーグは何か作り方が違うのだろうか?


「焼くときは膨らむので真ん中をへこませるように。肉汁を閉じ込める感じで両面を焼き、その後蓋をして中に熱を通します。俺はそのまま蓋してますけど、この時少し水を入れた方がいいかもしれませんね」


「ソースは作らないのですか?」


「今日は俺が持ってきたのを好みでかけてもらおうと思ってます。皆さんも味見してみますか?」


「それは是非!」


何枚か皿を借りてそこにソース・・・だけじゃないが、それを出していく。

ウスターソース、とんかつソース、トマトケチャップ、マヨネーズ、しょうゆだ。


「・・・・・とても複雑な味ですな。材料は香辛料と・・・酢?それと野菜や果物でしょうか?」


何か聞かれた時のためにスマホで調べてたのだが、ウスターソースを舐めたアルムさんはそれだけでここまで言い当てた。


「さすがですね!作り方はいろいろあるようですが、今おっしゃったのはほぼどのやり方でも共通して入ってます。レシピも教えましょうか?」


「いや、まずはこれを参考に自分たちだけでやってみましょう。世界が違えば材料がそろうかもわかりませんし、料理人の意地もありますからね」


「そうですか。どんなソースが出来るか楽しみです」


この人ならどれも作っちゃいそうだな。しょうゆは難しいかもしれないけど。


試食したら料理人さんたちの作った方が美味かった。材料や焼き加減なんかを知り尽くしてるから、初めての料理でもここまでの物が出来るんだろうな。


そんなわけで夕食の準備が出来たのでファウとカムジを呼びに行く。


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引っ越し先が山の中から異世界に変更になりました 爆滓 @U-J

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