第32話 ドサ回り②


部屋の中が急に、強烈な明るさの中に包まれた。

まるでフラッシュバンを食らったかのような閃光。

驚きで盛大にすっ転んだ俺の前に・・・次第に浮かび上がる神の姿があった。




「私はハル。光の神なり」



姿は光の鮮烈さでよく見えない。デカい光球のようにしか存在が確認できないが、ボンヤリとだけ数枚の羽根が見える・・・



「悪神より話は聞いた」


「お前が地上で力を付けたならば、私より試練を与えよう」





「・・・はい。光神様」


いつの間にか受け答えていた。頭がボーっとする。目の前の存在に対して、自然と畏敬いけいの念が沸き起こる・・・



「よろしい」





・・・



気付けば元の黒い部屋。

一瞬の出来事。残ったのは、自分でも意外なほど大きな信心だった。



ああ、ああいうのが神ってことなんだ。自然とおそれてしまう、そして惹かれてしまう・・・超自然的存在。それが神。今まで出会った神様とは恐らく格が違う。人間臭さが1ミリも感じられなかった。



喰らった。明らかに心が乱されてしまった。

精神汚染の一歩手前の状態なんじゃなかろうか。



落ち着け・・・ふう。ヤバかった・・・なんか、歴史上の人物・・・ジャンヌダルクとか・・・こうやって思いっきり喰らってしまって、ああなったんじゃないか?・・・なんてことを本気で考えてしまう。それ程の体験。



俺はあくまで中立の立場でありたい。多くの神に触れるも、そのどれにもほだされず・・・自己判断を下すことができる。そんな存在でありたい。



あのレベルの「格」を持った神と、この先また相対する可能性があるのだろうか?

きっとその度、俺は喰らってしまうんだろうが・・・心は変わらない。



はあ、一回休憩したい・・・しかし、悪神様はズンドコと神様を送り続けているようで・・・どうやら休む暇はないようだ。





・・・





「ホッホウ~!!・・・この残滓ざんし、光神様が先程までここにいらっしゃった・・・と見えますなあ?」



「その通りです。ダービシャス様」



この方は遊戯の神、ダービシャス様である。かなり友好的な神様で、出合頭に握手までされてしまった。かなり人間臭い神様だと言える。


その見た目は人間の好々爺こうこうやのようにも、冷徹な悪魔のようにも見える。あと実際、悪魔のようなツノが生えてらっしゃる・・・笑



「ホホ!正解!これがクイズならば、私は一点先取といったところですねえ」



「お戯れを、遊戯の神様と勝負など・・・俺には荷が重すぎますよ」



「フムゥ、そう言って私と勝負をしてくれる者は少ないのですよぉ・・・」


「あなたのパトロンである、ダークプール様は除きますがね!ホホ!」




どうやら悪神様とはギャンブル仲間のようだ。だが、神々の賭けについてはここ数十年は出禁を食らってしまっているのだそうな・・・きっと遊戯の神はギャンブルが強すぎるのだろう。



「調度暇を持て余していたトコロなのです。あなたに申し込む依頼という名の遊戯ゲームを考えるのが、今から楽しみですよ!ホホ!!」



「あの、どうぞお手柔らかに・・・笑」



「まさか!!私は遊戯の神ですよ?実現不可能な無理難題を課したのでは、神の名折れです!ちょうど良いゲームバランスを実現してみせましょうとも!!」




「それは・・・ありがたいです。神様方が天上から見ていて楽しんで頂けるよう、最善を尽くします」


「・・・ホッホウ。なんと謙虚な姿勢でしょうか。その顔が歪むところが見たいような・・・苦難の末、喜ぶ顔が見たいような・・・とにかく、楽しみなことに違いはありませんねえ」



最後にちょっと怖いセリフを残しながら・・・ダービシャス様は、それでは!と快活に帰っていかれた。



神々からの依頼を「ゲーム」と称した神様。他の神様からの依頼とは一風変わったクエストが課されそうな・・・そんな気がするぜ・・・






・・・





「お前か・・・悪神の信徒たる、ニンゲンよ・・・」



「我は海神、ノーフォーク」



女神だ。女性の声色をしている。しかし人の姿はしていない。流れる髪はタコやイカの触手のようで、その顔は半魚人めいた見た目をしている。現世でのクトゥルフ神話を想起させるかのような、そんな出で立ちの神。人間の感性から言うと、少し邪悪に映ってしまうのは失礼な事だろう。なるべくその邪念を振り払う。



光神様のように、格が高い神様のようにも見受けられる。そもそも悪神様を呼び捨てにしている時点で位の高い神なのであろう。海を統べるというのだから、そりゃそうか。おいそれと下手な発言はできない、そんなオーラを感じる存在だ・・・



「我が眷属、マーフォークは心穏やかなる者達・・・」



「それを良いことに、騙され・・・狩られる者もいる・・・」



「彼らの助けになってやってほしい」



「さすれば、お前と悪神の願いは叶えられよう」




強面こわもての見た目とは裏腹、実に平和的な依頼だ。

海に住まう者、マーフォーク。俺がキャラクリで確認した際も、実に好感触な種族であった。排他的な側面の無い、博愛主義的な種族。その性格を悪党に利用されることがある・・・ということか。




「海神様、承知致しました。マーフォークと出会った際には、最大限彼らの悩みの助けとなりましょう」




「頼むぞ・・・」






そのままノーフォーク様は姿を消した。優しい依頼である、マーフォークにとっても・・・俺と悪神様にとっても。


きっと募金をしてやってもいい、くらいの気持ちでいてくれていたのだろう。故に、こういったレベルのクエストを俺に課したのだ。


海の母に、俺は静かに敬意を感じる。見た目が怖いとか思って、マジでごめんなさい。あなた様は慈愛に満ちた素敵な神様です・・・







・・・






「僕はベッドフォード。夢の神さ」



「夢ってのはあれだよ。寝ている時に見る、あれのことさ。言わなくても、分かってたかな?」



ぼさぼさの長髪を持ったアンニュイなかんじの美青年。完全に人の姿をした神様だ。うわかわいい、まくらを片手にあくびして・・・宙に寝転んでらっしゃる。



「久々に起きてたら、悪神様に捕まっちゃってね・・・」


「でも話を聞いたら、すごい便利だなって思って・・・君に会いに来たってわけさ」



「君にはね・・・夢魔むまの退治をお願いしたいかな~って」




「む、夢魔って言うと・・・あれですか。人の夢に巣食うとかいうあの・・・」




「そうそう!あれを集めて、僕に捧げてほしいのさ~。僕はあれが大好物なんだよね~」



なんか、無邪気な方だなあ。でも一体、どうやって・・・



「ああ、夢魔の気配がしたら僕が教えてあげるよ。退治の仕方も、その時教えてあげるね」


「まあ、僕が起きてたらだけど・・・ね~笑」



「は、はあ」



それじゃあね。と言い残してベッドフォード様は消えていった。なんか、やけにビジュアルが良かったな・・・そんで食いしん坊キャラでもあると・・・男の俺が言うのもなんだが、可愛らしいお方やね・・・



でもきっと、位が高いほうの神様ではないのだろうな。段々分かってきたかもしれん、神様の「格」について。


以前ハートルプール様が言っていた。神は生まれた順に姉弟になると。それはつまり生まれた順に序列が決まるということだ。


地球の聖書でも言っていた、神は最初に「光あれ」と言ったとかなんとか。きっとこの世界でも最初のほうに光が生まれたのだろう。だから光神様の威光は凄まじく、自然の代表格である海神様にも強いオーラが見られたのだ。


悪神様や、ラスターシャ様はいつ生まれたのだろうか。そんなことを考えている間に・・・また次の神がいらした・・・











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